表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/50

43

区切りが悪かったので今回は短めです。

「今更だけど、気付いた事があるんだ!」



リリー商会の店舗カウンターを勢いよく叩いて立ち上がり、黄色のパーカーにデニムのホットパンツ姿のリリーは叫んだ。



「コーヒーが零れますよ。 今度はなんです、藪から棒に?」


「この世界に来てから一匹も魔物を倒してないのではないかと!?」



胡乱な目で聞いてきたエリカに対して、リリーは拳を握りしめて力説した。



「いまごろ気が付いたのですか? 無意識には倒してますけどね」


「そうだったの?」



無意識には倒していると言われても、自覚が無いリリーは小首を傾げてキョトンとするだけであった。



「はい、初日にファイアボールの練習中に巻き込んで、少数ですが魔物を倒してますよ?」


「知らなかった…… でも、無意識だからノーカウントだよね!」


「まあ、ノーカウントといえばノーカウントですかね。 でも、突然どうしたのです?」



突然、叫んだリリーを不思議に思ってエリカは尋ねた。



「いやー ファンタジーの醍醐味といったら、モンスターとの血湧き肉踊る死闘でしょ!」


「レベル差を考えてもみて下さい。 死闘になんかならずに、それこそ蹂躙虐殺ですよ? 魔界から出てきたロス君ですら精々40そこそこのレベルなんですから」



目を少年?少女のようにキラキラさせて言うリリーに、エリカは半ば呆れながらも説明するのだった。



「むむむ、ということは?」


「リリーの相手になる魔物は存在しない、ということですね」


「それって、本来なら危なくなくて嬉しいことなんだろうけど、なんか嬉しくないや」



魔物のレベルが低すぎて相手にならないと言われて、リリーは眉を下げて残念がった。



「気持ちは分かりますけど、事実ですから仕方ありませんよ」


「うーん、神さまって暇な職業だったのねー」


「まあ、忙しくても部下の下級神や天使たちに仕事を押し付けて、神さま自身は遊んでいるイメージがしますけどね」


「神とはニートオブキングだったのか」



エリカに神のイメージを語られて、リリー自身もウェブ小説等を読んで思い当たる節があったのか、ガックリと肩を落とすのであった。



「まあ、中には真面目に仕事をしている神さまもいるとは思いますよ? この世界は他の神の存在が感じられませんので、分かりませんけど」


「この世界には私の他には、神さまは居ないってこと?」


「絶対とは言い切れませんけれども、おそらく居ないかと思いますね」


「そうなると、私が唯一神…… 唯一無二の存在、オンリーゴッド! ふふふっ」


「病気が悪化、進行していますね」



唯一神に中二心をくすぐられたのか、リリーは怪しげな笑みを浮かべながら独り言ちた。



「けど、職業と称号は戦神のままなんですよね?」


「うん、そうだね。 でも、それって変だよね?」



エリカが確認の為に問い掛けたのに対して、リリーはステータス画面を開いて確認した。



「変といえば変ですね、もしかしたら存在が感じられないだけで、他にも神さまは居るのかも知れませんね?」


「居るのか居ないのかどっちなのよ?」


「正確なことは、私にも分かりませんとしか言いようがありません」


「ふぅ~ 使えない従者だな」



リリーは両手を広げ肩を竦めて、外人特有の大袈裟な"やれやれ"のポーズでエリカをからかうのであったが、



「私に依存しているリリーには言われたくないですよ?」


「い、依存なんかしてないもん! エリカは私の従者だから一緒にいるんだから!」



あっさりとエリカに切り返されてダメージを食らったリリーは、顔を真っ赤にしながら言い訳をするのだった。 依存している自覚はあったらしい。



「はいはい、それで、万が一にでも他に神が居たと仮定して、リリーはどうしたいのですか?」


「うーん、特にどうしたいとかはないんだけど、話の流れで聞いてみただけかな?」


「なんという行数の無駄遣いでしょうか」



呆れたエリカは、ジト目でリリーを見遣った。



「だって、暇でやることがないんだもん!」


「こうして店番しているじゃありませんか?」



暇だと頬を膨らませて不貞腐れるリリーに対して、エリカは相変わらずリリーは子供だなと思うのであった。



「それはそうなんだけどさ…… 神さまが店番って考えたらシュールだよね?」


「それを言ったら、雑貨屋を営んでいる時点で十分シュールですよ」


「まあ、確かにそうだね」



そう言ってリリーはコーヒーを美味しそうに啜った。






「ごめん! 店主はいるか!」


「いらっしゃませ、私がリリー商会の会頭、リリー・マルレーンですけど?」



勢いよく店頭に飛び込んできた強面の騎士に対して、リリーは自己紹介をした。



「君がこの商会の会頭?」


「はい、会頭といっても、私とエリカだけの商会とは名ばかりの雑貨屋ですけどね」


「なるほど、少女二人だけで経営しているという噂は本当だったのだな」



名乗ったリリーを一瞬だけ、こんな幼い少女が?と訝しんだ騎士であったが、噂のこともあり納得するのであった。



「それで、騎士団の騎士さまが当商会に何用でございますか?」


「うむ、この商会でポーションは一日に最大どれぐらい作れるのだ?」



慇懃に尋ねるエリカに対して、騎士はポーションの最大作製数を問い返してきた。



「理由をお聞きしてもよろしいですか?」


「戦争だ!」



騎士は顔を強張らせて、戦争が始まったと告げた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ