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 ビア樽 製作者エリカ・シュタインベルク


 エールを入れたら、冷えたビールに変わる不思議な樽。 氷と風の魔法が込められている魔道具


 レバーを引けばビールが出る


 使用時間:連続で72000時間使用可能


 ※残量が96時間を切ると黄色に、24時間を切ると赤色に魔石が変色する

  残量が無くなったら魔石が壊れて使用不可、普通の樽としては使える





「さっきの樽に比べて随分と小さな樽ですね?」


「どのみち、エール樽から移し替えるわけですから、この樽が120リットルの大きさである必要はありませんし、これなら場所も取りませんしね」


「なるほど」



リーゼが想像していたよりも完成した魔道具は小さかった為に不思議に思ったのだが、エリカの説明で納得するのであった。



「これぞまさしく、ビールサーバーだ!」


「泣いたカラスがもう笑いましたか? リリーに涙は似合いませんから良かったです」


「こ、子供じゃないもん! ぷんぷん」



魔道具を見て喜ぶリリーを冷やかすエリカに、リリーは子供ではないと言い張るのだが、その仕草は子供そのものであるという事に、本人は気が付いてない。



「はいはい、では、早速これでビールを頂きますかね?」


「でも、これって私の持っている魔石よりも大きめの魔石を二つも使ってますから、お値段は高かそうですね?」



ミラは魔道具の価格がとんでもない値段になるであろうと想像して恐る恐る尋ねた。



「その分、さっき作った冷やすだけの樽の百倍の時間は使えますよ?」


「ひゃ、百倍!? 十倍の間違いではなくて、100倍ですか?」


「ええ、100倍で間違いないです。 魔石の大きさが10倍で樽の大きさが1/10ですから、100倍ってことです」



目を丸くして驚くミラに対して、エリカは事もなげに百倍と言い放った。



「八年以上も使えるんですね。 私が24になって、ミラさんがさんjふがっげほっy」


「リーゼちゃん、なにか言いましたか?」


「い、いえ、なにも言ってませんです、はい」


「なら、よろしいです」



そう言ってミラはニッコリと微笑むのだった。 目は笑ってはいなかったが。



「値段はそうですね、売り物でもないですし、値段を付けるのも面倒だから、リリーと私のビール代をタダにするということで、どうですか?」


「そんな適当でいいのですか?」


「いいんじゃないですか? さっきも言いましたけど、一々魔法を掛けなくてもビールが飲めるのですから、私も楽ができて万々歳です」



ミラが適当すぎるのではないかと、やや非難めいて問い掛けたのに、エリカは楽が出来るのだからの一言で済まそうとした。



「ダメです! そうですね、20ゴルドで売って下さい!」


「リーゼ、エリカが私たちのビール代だけでいいって言っているのに、どうしたの?」



突然リーゼが叫んだのに対して、リリーは首を傾げるのであった。



「他のお客さんに文句を言わせない為にも、売買契約はちゃんとしておいた方がいいと思います!」


「それもそうですね、私の思慮が足りなかったみたいです。 では、20ゴルドで売りますね?」


「ありがとうございます! それでお願いします」



エリカが申し訳なさそうに了承したのに、リーゼは感謝して頭を下げた。



「でも、20ゴルドなんて大金の売買をリーゼがこの場で決めちゃってもいいの?」


「酒場の経理は私が任せれていますから、リリーさんが心配しなくても大丈夫ですよ」


「それならいいけどさ」



金額が金額なのでリリーは心配そうに尋ねた。 それに対してリーゼは笑顔で心配ないと返したのだが、



「でも、20ゴルドの大金を酒場だけでは用意できませんので、月々20シルバの100回払いでお願いしますね?」


「それは大丈夫って言うのか……」


「分かりました、レンタルみたいなものですね」



リリーはリーゼの答えに思わずズッコケそうになるのであった。 エリカはリーゼのお願いに冷静に是と答えた。



「しっかりしているというのか、ちゃっかりしてるよねリーゼも」


「そうですか~?」


「そうでしょうが! ちゃっかりと10ゴルドも値引きさせているようなものでしょ?」


「えへへ、バレました? でも、ミラさんが損するわけじゃないですよ~?」


「はぁ~、それはそうだけどさ」



100回の分割払いにして、なおかつ大幅な値引きを勝ち取ったリーゼに対して、ミラは呆れてため息を漏らした。



「まあ、私が20ゴルドで売るって言いましたしね、この話はこれでお仕舞いにして、みんなでビールを飲みませんか?」


「うん、飲みたい! リーゼお願いするね!」


「はい、セットしたらビール持ってきますね!」


「ふう、やれやれです。 ついでに、リーゼあんたの奢りで塩茹で豆もお願いするわ」



エリカが話を纏めるとリリーも目を輝かせて早く早くと急かし、ミラはここぞとばかりにリーゼに集る(たかる)のだった。



「ひぇー どうしてこうなった?」


「儲けた分を還元するのよ」


「ワカリマシタ」


「ふふ、ミラさんもちゃっかりしてましたね?」



エリカは二人のやり取りを微笑ましく見ていた。



「悪銭身に付かずだね!」


「リリー、その例えは少し違う気がしますよ」






「うむ、亭主元気でビールが美味い! ごきゅごきゅ」


「リリーに亭主なんていませんし、持たせませんし、意味分かりませんし」



意味不明な言葉を吐くリリーに対して、エリカも意味不明な言葉で返した。



「プハァー ビール最高!」


「前から思っていたけど、ミラさんって酒飲みだよね?」


「そうですか? 精々ジョッキに四、五杯ですよ?」



美味そうにビールを飲むミラを見遣ってリリーが酒飲みと評したのに、自覚が無いミラはコテンと小首を傾げた。



「水の汚い土地では、エールやワインが水代わりに飲まれているみたいですから、飲めても普通なのかもしれないですね」


「いや、そうじゃなくてさ、飲み方がオヤジ臭いというのかな?」



エリカの説明に意味が違うとリリーは答えて、ミラの飲み方は、オヤジ臭いと表現した。 確かに、若い女性がビールを飲んだ後に「プハァー」は、ないだろう。



「ごきゅごきゅ ビール美味しいです。 はぅ~」


「オヤジ言わないでぇー リーゼなにあんたまで飲んでるのよ! 仕事中でしょ?」



オヤジと言われたミラは、幸せそうに飲んでいるリーゼに半分八つ当たりをするのであった。



「試飲ですよ? 試飲。 これも仕事の一環です! キリッ」



キリッと言いつつも、リーゼの顔は全然締まってなかった。



「二人の言い草や仕草がリリーに似てきましたよね?」


「そうかな? エリカに似てきたんじゃないの?」


「いえ、やっぱり、リリーですよ」


「いや、やっぱ、エリカだよ」


「仕方ありませんね。 では、ここは私で良いです」


「それなら、私が!」


「……」


「"どうぞどうぞ"要員がいない……だと……!?」


「そうですね、これでは、ガチョウ倶楽部が出来ませんね」


「うん、一人足りないし、お題も違う気がする」



リリーとエリカは、お互いに罪?を擦り付けあって、じゃれ合いを始めた。



「お二人の影響力が強すぎるんですよ、リーゼに悪影響ですので改善を要求します!」


「あわわ、ミラさんが暴走してますよー」



ハージマリは今日も平和であった。




━━━━━━━━━




「ロッテさん」


「なんだいクララ?」


「最近、私の出番が少ないんですよ……」


「まあ、それは誰かさんのセンスと容量と処理能力が足らない所為だろうさね」


「つ、付け届けすれば、出番が増えますかね?」


「俗物臭いものいいだねぇ」


「俗物、煩悩バンザイです!」




━━━━━━━━━




「えっくしっ! くしゅん、ふふっ、誰かがリリーちゃんは可愛いと噂をしているな」


「おめでたい思考回路をしていますね。 風邪を引くといけませんから、お風呂にゆっくりと浸かりましょうか?」


「全状態異常無効だから、風邪なんて引かないと思うけど?」


「言葉の綾ですよ。 ささ、ホームに戻ってお風呂に入りますよ」






ちゃぽん




「ふぅ~ いい湯だね~」


「そうですね、やはり露天風呂はいいですね」


「温泉に入ると身も心も洗われるね~」


「まさに天界よりも天国ですよね、それはそうと、リリーの少し大きくなりましたね?」


「そ、そうかも? エリカが毎晩揉むからかな?」


「なにを想像してるのか分かりますけど、身長のことですよ?」


「お、お風呂で裸になって『大きくなった』って身体的特徴の変化を尋ねられたら、普通は胸のことだと思うじゃん!」


「ふふ、リリーは可愛いマイステディですね♪」


「なにがマイステディだ! 『リリーは』じゃなくて『リリーの』って誘導しといて!」


「今夜も可愛がってあげますから怒っちゃいやん♡」


「うー」


「まあ、実際の所は1ミリも伸びてはいないんですけどね♪」


「そ、それじゃあ、なんで聞いたのよ!」


「サービスですよ? ここ最近は百合成分が足りてませんでしたし」


「誰も為のサービスよ! だ、れ、の!」


「ふふ、良いではないか良いでは」


「って、なに、その"わさわさ"させてる手は? 目も怖いんですけどー ちょっとー あんっ♡」



ガラッ



「お邪魔しまーす!」


「あらあら」


「まあまあ」


「若いっていいわよねぇ」



「……」



「あわわ、お邪魔しました?」


「お、お邪魔じゃないし、こ、これは誤解だからね!」


「五回も六回も逝きたいんですね、お姉さん頑張っちゃいますよ? みなさんは気にせずにゆっくりとお湯に浸かっていって下さいね」


「リリーさんがピチピチしている理由が分かった気がしました」


「クララ、リリーは元々ピチピチしていますよ? それを言うならエリカさんがツヤツヤしているです」


「モジモジ」


「リーゼは、なにをモジモジしているんだい?」


「お母さん、絶対に分かっていて聞いてるでしょ!」


「さあ? どうだかねぇ」


「クララもリーゼも耳と尻尾がソワソワしていて分かりやすいですね」


「わ、私は冷静です! そういうミラだって赤いじゃないのよ!」


「わ、わ、私も、れ、冷静です!」


「獣人は分かりやすくていいねぇ」



「みんなで洗いあいっこしましょうか? ていうかしよう、いますぐしよう!」


「誰かエリカを止めてぇー」




今回は━━━のクララのセリフ以降、風呂シーンとかに地の文は無粋と思い、あえて書きませんでしたが、いかがでしたでしょうか? 読み難かったかな?

感想、評価等お待ちしています。

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