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お茶を飲み終えた三人は、ギルド酒場から空のエール樽を譲り受けてホームに戻ってきた。




「樽はエールの入っていた、これを使いましょうかね、この樽は約120リットル入りですので、バレル樽とでも命名しときますかね?」


「ふむふむ、1バレルは約120リットルだったのか」


「正確には、119.24リットルとかでしたかね? まずは洗浄しますか、ピュア」



ピュアと言ったエリカの手から淡い光が出て樽全体を包み込んだ。



「次は水を溜めますよっと、ウォーター」



そう言ってエリカは樽の上部に開いているゴルフボール大の穴に向かって手をかざして、手のひらから水を大量に放出するのであった。



ドバドバドバァーー



「コップ三杯でヒイヒイ言ってる私への"あてつけ"ですねこれは」


「そんなつもりはなかったんですけど、結果的にミラさんには、嫌味に取られても仕方ありませんでしたね」



エリカが何食わぬ顔で大量の水を出すのを見たミラが嫌味半分に言ったのに対して、エリカは肩を竦ませるのだった。



「エリカさんも真に受けないで下さいよー 半分は冗談ですから」


「半分は本気だったんですねわかります、ミラさん生きていてもいいんだよ?」


「勝手に人が自殺するみたいに言わないで下さい、誰も死にませんよ!」



リリーに茶化されたミラは少し頬を膨らませて、怒った振りをするのであった。



「アイス5℃維持 これで、この小指の魔石を嵌め込んで、この魔石がどれだけの時間使えるか分かりますね」



そう言ったエリカは魔石を樽の上部に嵌め込んで、それからちょこちょこと細工を施していくのだった。



「小指の魔石って言い方が怖いね」


「そうですね、魔物の小指を切り落としたら、魔石になりましたみたいな」



リリーとミラは、エリカが小指の"爪ぐらいの大きさ"を端折ったことを揶揄して遊ぶのである。



「表現が難しいんですよ、鑑定っと」



エリカは二人を軽く往なして、出来上がった樽を鑑定するのであった。




 冷蔵樽 製作者エリカ・シュタインベルク


 樽を冷やせる氷の魔法が込められている魔道具


 スイッチを入れたら発動する


 使用時間:通算で720時間使用可能


 ※残量が96時間を切ると黄色に、24時間を切ると赤色に魔石が変色する

  残量が無くなったら魔石が壊れて使用不可、普通の樽としては使える




「720時間ってことは、連続稼働で30日間か? 長いのか短いのか判断に迷うところだね?」


「魔石の価値が5シルバくらいですので、割ったら16か17ベニーが1日あたりの魔石分の値段ですけど、どうでしょうかね?」



リリーが使用時間について腕を組み考え込むのに対して、エリカも魔石の日割りの単価から思考するのだった。



「私には分からない事が、そんなに詳しく分かるんですね」


「そうですね、みんなが分かりやすいように、説明文を表示するよう次から改造してみましょうか?」



ミラが、二人が鑑定で樽の仕様を読み取れるのを羨ましいと思い口にしたのに、エリカは気付かされて改良を考えるのであった。



「問題は価格設定をどうするかだよな~」


「10シルバでは安すぎる気がしますよね? 15シルバぐらいですかね?」


「私はそれでも安いような気もしますけど、イマイチ判断しかねます」



値段をどうするべきか思案するリリーに対して、エリカは15シルバと言い、ミラは安いと言いながらも判断は二人に委ねるのであった。



「15シルバか、日本だったら15万で買った冷蔵庫が1ヶ月で壊れたら発狂されそうだね」


「日本とは状況が違いますから、一概には言えませんけどね」


「それもそうだね」



日本で新品の冷蔵庫を買って1ヶ月で壊れたのなら、間違いなくその製品は回収されて返金か代わりの品を用意する嵌めになるであろうことは自明の理であろう。



「これはエールとか飲み物を冷やす業務用で一般家庭用とは違いますけれども、たとえば、冷えてない普通のエールがギルド直営の酒場で3ベニーですから、冷えたエールを1ベニー上乗せした4ベニーで提供すると仮定しまして、大まかな計算をしますと、樽一つで3シルバ40ベニー売り上げが増えるわけです」


「エリカさん、その計算だと一日にどれだけエールが売れるのかが、分かりませんよね?」



エリカが単純に計算した説明に対して、ミラは疑問を呈するのだった。



「そうですね、リーゼさんに聞きに行きましょうか」


「リーゼに聞いたら、この魔道具の販売価格も割り出せるってことか」


「では、酒場に行って聞いてみましょう」



エリカはそう言って、二人を連れ出してギルド酒場へと足を運んだのであった。






「こんにちはー」


「こんにちは、みなさんお揃いでお茶ですか?」


「お茶は済ませてきちゃったけど、紅茶もらおうかな?」



これ以上お茶を飲んだら腹がタプタプになると思いつつも、なにも注文しないのも悪いと思って紅茶を頼むリリーなのであった。



「ミラさんもエリカさんも紅茶でよろしいですか?」


「飲み比べも乙なものですね」


「そうですね、私が東方で仕入れてきた茶葉には負けると思いますけど」



ミラが飲み比べと言ったのに対して、エリカは冗談半分に酒場の茶葉を貶すのであった。



「自覚してるんですから、それは言わないで下さいよー いまの茶葉が切れたら、エリカさん所から買いますから同じになりますし」


「エリカ、そんな話になってたの?」


「はい、この前お茶をご馳走した時に、そういう話に成りましたね」



リーゼが頬を膨らませて抗議しながら言い訳をするのに、リリーはそんな話は聞いてないとエリカに尋ねたのだった。



「リリー商会の商品に茶葉が加わるのか」


「卸すのは、この酒場だけですから、商品と言えるかは微妙ですね? リーゼには小分けして、お裾分けするって言ったのですけどね」


「冒険者相手の商売ですから、お茶はあまり出ませんけど、商売ですからちゃんと買わないといけませんって紅茶淹れてきますねー」



そう言ってリーゼは紅茶を淹れる為にカウンターの奥へと引っ込んで行った。



「リーゼは商売に向いているみたいね? 自分でお店を開いても、きっと成功するね。 そんな私はギルド職員で満足ですけど」


「ギルド職員の地位は安定してるもんね、特にミラさんみたいに技能があれば尚更かな」



しっかりしているリーゼを見遣ったミラが独り言ちるのを聞いたリリーが、公務員は安定しているみたいな揶揄を言うのだが、この世界のミラには通じないのである。



「私には、それしか無いから上を望まないともいいますけどね」


「このギルドカードを作れるのは十分に誇っていいと思いますよ?」


「ありがとう、お世辞でもエリカさんに、そう言ってもらえるだけで充分です」



エリカは首からぶら下げている鉄のプレートで出来たギルドカードを手に取ってミラを褒めるのであった。




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