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ホームに戻ったリリーがエリカに尋ねた。



「ポーション改の在庫ってそんなにあったっけ?」


「いまから作るんですよ、残りはポーション改を三百本だけですから、直ぐに終わりますよ」


「うへー まあ、直ぐに終わるんだけどね」


「では、ちゃっちゃと作りましょうか」


「そうだね」



そうして二人はポーション作りに励むのであった。



「調合+1 調合+1 調合+1 調合+1」


「リリー、調合+1×100のほうが早いですよ?」


「なぬ!? しくったわ……」



一つ作ってはスキルを唱えていたリリーに対して、突っ込みを入れるエリカなのであった。


こうして残りのポーションを作り終えて、二人はギルドへと急いだのであった。






「ポーション改が二割増しで、一本、1シルバ50ベニーの五百本で、7ゴルドと50シルバ、ミドルポーション改とマジックポーションが百本づつで計、12ゴルドの合計で、19ゴルドと50シルバですね。 これだけで私の給料の二年分ですか、凄いですね」


「ミラさんも若いのに、年収10ゴルドは立派だと思うよ!」



二人がギルドへ持ってきたポーションを計算していたミラが、溜め息交じりに呟いたのに対して、リリーがミラの収入を褒めるのであった。



「リリーさんに言われても、ちっとも嬉しくないのは何故ですかね?」


「ミラちゃんはまだいいさ、私なんて五年分だよ」


「ミラもクララも生々しい会話はおよし! まあ、気持ちは分からんでもないけどねぇ」



やいのやいのと言い合うミラとクララを静止するロッテなのだった。



「ところで、これを誰が領都まで運ぶの?」


「リリー、良いところに気が付いたねぇ」


「え? もしかして私、地雷踏んだ?」



ポーションを誰が運ぶのか尋ねたリリーに、ロッテが悪そうな笑みを浮かべるのであった。



「はい、おもいっきし踏みましたね」


「リリーさん、言い出しっぺの法則ってヤツみたいですね」


「ご愁傷様です、ナムナム」



エリカは冷静に言い、ミラとクララは同情の眼差しをリリーに向けるのだった。



「今回は副支部長権限で、リリーとエリカにはポーション運搬と護衛を頼むよ。 事情が事情だけに私も同行するしね」


「うへー、フラグが立ったみたい……」


「そうですね」



ロッテは冒険者ギルド副支部長権限で、二人に対してお願いという名の強制をするのであった。 それを嫌そうに聞いたリリーなのだった。



「なに、領都までは片道たった三日の道程だよ。あんたたちには散歩と変わらないだろ?」


「私たち、この前Eランクになったばかりなのに……」


「リリー、諦めも時には必要ですよ?」



軽く言い放つロッテに対して食い下がるリリーであったが、エリカは宥めすかすのだった。



「エリカの言う通りさね。 製造者責任というか、納入業者責任で領都までお願いするよ!」


「クリンスマンで運んだらダメかな?」


「どうですかね? 領都の手前で降りれば騒ぎにはならないとは思いますけど?」



諦めたリリーであったが、少しでも楽をしようとクリンスマンを使おうと言い出すのであった。



「クリンスマンって男装の麗人のクリスの事かい?」


「はい」


「うーん、いつまでも隠せるもんでもないし、エリカ、クリンスマンの正体を言ってもいいかな?」


「別に構わないでしょう、領都ではポーションの入荷を待ち望んでいるのですから、一日でも早く届けた方が良いでしょうね」



ロッテが聞いてくるのに対して、リリーは思案しながらエリカに伺いを立て、それに是と答えるエリカなのであった。



「それじゃあ、ショーシンシャの木の辺りでクリンスマンを呼び出すか」


「そうですね、流石に街中で呼び出すのは不味いですから」


「呼び出すって、クリス、いや、クリンスマンはリリーの召喚獣かなんかなのかい?」


「うん、まあ、ロッテさんも見たらビックリするかな?」



クリンスマンを召喚した時のことを思って、クスッと笑うリリーであった。



「そうなのかい、あたしゃ出立の準備をしてくるから、あんたたちも準備してきておくれ、一時間後に此処に集合だよ」


「分かりましたが、クリンスマンを使うから荷馬車は必要ないですので」


「相分かったよ。 クララ、依頼人をあたし名義で領都までの運搬と護衛のクエストを二人に指名で出しといておくれ」



エリカの言葉を了承してから、クララに指示を出すロッテなのであった。



「分かりました。 副支部長、報酬はどうしますか?」



仕事モードのクララは役職名でロッテに伺いを立てるのだった。



「そうさね、緊急の案件だし、モノがモノだからねぇ、エリカ、クリンスマンで運べば時間はどれくらい掛かるんだい?」


「領都の手前どれくらいまで飛んで行くかにもよりますけど、歩く分を入れても一、二時間で領都には着けますね」


「そんなに早く着けるのかい、それなら1ゴルド出しても惜しくはないねぇ、クララ、1ゴルドでクエスト依頼しといておくれ」



一、二時間で領都に着けると言われて目を丸くしながらも、ロッテは素早く報酬を決めるのであった。 どんぶり勘定とも言うが……



「ほえー クリスさんって凄いんだーって、1ゴルドですね、了解しました」


「ついでに、このクエストをDランク昇級試験にでもするかね?」


「ロッテさん、それは拙いのではないですか? 私たちはまだ貢献度が貯まってませんし」


「うむ、Dランクに上がったら嫌な予感がビシバシするしね」



突然ロッテがDランク昇級試験と言いだしたことに対して、エリカは常識に照らし合わせて否定し、リリーは悪寒を覚えるのであった。



「はははっ、心配しなくても、別に招集を掛けて扱き使おうって訳じゃないから安心しなよ。 では、一時間後に出発するよ!」






一時間後~




「ポーションが消えました……」


「何処に消えたんでしょうね?」



運搬するポーションが目の前で消えた事にクララとミラは目を丸くするのだった。



「ん? アイテムBOXの中だよ? ほら、こうして自由に取り出せるのさ♪」


「空間魔法まで使えたとは、あんたたちは、なんでもありなんだねぇ」



驚いてる二人にリリーが事もなげに実演してみて、それにはロッテも呆れるのであった。



「では、行きましょうか?」


「そうさね、ミラにクララ、留守は頼んだよ」


「了解しました」


「はい! 気を付けて行ってきて下さいね」


「まあ、なにもなかったら今日中に帰ってくるから、大丈夫だよー」



気楽にヒラヒラと手を振って答えるリリーなのであった。



「リリー、それはフラグを更に立ててますよ?」



こうして三人はショーシンシャの木の辺りまで行き、そこでリリーがクリンスマンを呼び出したのであった。






「我は願う、漆黒の闇の中を切り裂k痛てっ!?」


「またそれをやりますか、普通に呼び出して下さい」



召喚の詠唱を唱えようとしていたリリーは頭を叩かれるのだった。 まあ、前出の詠唱ではクリンスマンが召喚される事は無いのだが。



「相変わらずエリカは浪漫を解さないんだからー まあいいや、では…… クリンスマン出ておいでー」



「呼んだか、我が主よ?」



現れたクリンスマンは男装の麗人の姿のままであった。



「あれ? 人化したままで出てきたね?」


「またカレーライスを食べれると思って人化で現れたのだが、違ったみたいじゃな?」



クリンスマンは意外と食い意地が張ってるみたいだ。



「カレーは、また作りますから、今日は領都の手前まで飛んで欲しいのです」


「領都というと、このヨーク公爵領の領都じゃな?」


「はい」


「それなら五分で着いてしまうではないか? つまらんのう」



エリカの頼みに、目的地が近すぎると不満顔のクリンスマンなのだった。



「普通の人間なら歩いて三日掛かるから、そこそこの距離なんだがねぇ」


「そういうことだから、お願いするね」


「主の頼みでは断れないのう、任されよ。 エリカ、カレーは頼んだのじゃ」



ロッテはクリンスマンが漏らした五分の言葉に半ば呆れて、リリーは、お願いという名の命令をするのであった。



「はいはい、任されましたよ」


「エリカさんや、美味しかったんだから邪険な言い方はいかがなものかと?」


「主よ、エリカがツンツンしているのは昔からなのじゃ」



またカレーを食べたいと言われて嬉し恥ずかしなエリカは、ぶっきらぼうに言い、リリーがその言い方を窘めるのに対して、クリンスマンは相も変わらないエリカだと笑うのだった。



「デレ成分が不足しているのは気のせいですか?」


「そうですよ、気のせいです」


「では、行くかのう。 顕現」



顕現、そう言ったクリンスマンは、体長三十メートルほどの銀色の龍の姿に変身したのであった。





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