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少し短めです。
「はあ~ 気持ち良かったー」
「最高でしたね♪」
「幸せでした~」
「肌もスベスベして若返った気がするねぇ」
湯上りの脱衣所で、四人が異口同音に満足したと声を揃えるのだった。
「みんな満足してくれたみたいで、造った甲斐がありました」
エリカが皆が満足した様子に微笑むのであった。 リリーはというと、
「湯上りのビールが私を呼んでいる!」
美女、美少女の裸体よりもビールと平常運転だったのである。 女性の裸に頓着しないのは、リリーがそれなりに経験があるからなのである。 けして、"わらべのみかど"ではないのだ。
「リリー、ちゃんと髪を乾かさないとダメですよ?」
「自然に乾くから大丈夫だよ、それよりもビール!」
「しょうがない子ですね、ウインド38℃」
呆れながらもエリカはリリーの髪を乾かすのだった。 その顔は呆れながらも、どこか慈しむような眼差しをリリーに向けるのであった。
「ほへー 風の魔法で髪を乾かすなんて便利ですね」
「エリカさん、風属性も使えたんですね?」
リーゼがエリカの魔法を羨ましそうに言い、クララは驚き半分に聞いてきた。
「一応、闇以外は全部使えますよ?」
「うそ!?」
「嘘を言っても仕方ないですよ。 風の魔法はビールを作るのにも使ってましたし、髪を乾かしているこれは、火の魔法も併用しているのですよ?」
闇属性以外、全部使えるの言葉を聞いて、ミラは思わず"嘘"と声をあげてしまったのだが、それをエリカは即座に否定したのだった。
「ご、五属性持ちなんて聞いた事ないですよ」
「ダブルでも百人に一人とかですよね?」
クララが目を丸くしながら自分に言い聞かせるように言い、リーゼはダブル、二属性持ちの割合を思い出しながら言った。
「やっぱりそうなんですね。 では、今の話は内緒ということでお願いしますね?」
「この話は絶対に内緒にしとかないと不味いだろうねぇ」
「そうですね。 トリプル持ちですら、世界で数えるくらいしか居ないのですから」
内緒にとお願いするエイカに、ロッテとミラは頷くのであった。
「はー 凄いのは分かりましたけど、凄すぎて良く分かりません」
「ふふ、ちなみにリリーは闇も使えますよ?」
「六属性全部が使えるのかい!?」
リーゼが凄いのを通り越して半ば呆れているのに対して、追い打ちのように言うエリカだった。 それには流石のロッテも声のトーンが上がるのであった。
「本当にリリーさんとエリカさんは何者なんでしょうね?」
「クララ、あまり詮索するものではないですよ? 私も興味が無いと言ったら嘘になりますけど」
「ええ、いまは詮索しないでくれると助かります」
二人の出自に興味を持つクララにミラが大人の対応をして、それにお願いするエリカなのであった。
「そんなことより、早くビールが飲みたい」
「それもそうですね、ちゃちゃと着替えて酒場に行きましょうか?」
困惑気味の四人に対して、我関せずでマイペースなリリーだったのである。
ゴキュゴキュ
「もう一つの極楽がここにありました、これは美味いです! ごきゅ」
「でしょ?でしょ! 湯上りのビールは最高! ごきゅ」
ミラが素直に感嘆の声を上げたのに上機嫌なリリーなのであった。 そこ、コーヒー牛乳こそ至高とか言わない。
「もう元には戻れない身体になってしまったわ ごきゅ」
「ごきゅごきゅ クララさん、言い方がいやらしいですよ?」
「リリーと同輩の匂いがしますね ごきゅ」
うっとりとするクララに対して、突っ込みを入れるリーゼとエリカだった。
「ごきゅごきゅ このビールだけれども、魔石で冷やせないもんかね?」
「やろうと思えばやれるとは思いますけど、効率が悪すぎますね ごきゅ」
「やはり効率が悪くて難しいのかねぇ ごきゅ」
魔石で冷やせたらと思案したのをミラに否定的に取られて、ロッテは残念がるのであった。
「貴族の中には魔石で魚を冷やして運んで、生で食べてる貴族もいるみたいですけどね ごきゅ」
「完全に貴族の道楽だね ごきゅ」
「ふむ、これは商売の臭いがするな ごきゅ」
「そうですね、魔石を庶民でも頑張れば買える値段まで落とせるかが、分かれ目ですね ごきゅ」
クララとリーゼの会話に目を光らせたリリーに対して、エリカは冷静に分析するのである。 みんなゴキュゴキュうるさいです。
「エリカさんなら出来るでしょうけど、エリカさん以外が出来ないのであれば、結局は庶民には手が届かな代物って気もしますが……」
「やはりそれがボトルネックですか」
問題点を指摘するミラにエリカも同調するのだった。
「ボトルネックとボルトネックって似ているよね?」
「似て非なるモノですし後者はリリー語ですから」
「オードソックスに通じるモノがあるよね!」
「通じますけど、通じませんし」
「不承不承と負傷武将って同じだよね!」
「同じだけど、同じじゃありませんよ、後者は膝に矢でも受けたんですかそうですか」
「オタワとオワタって似ているよね!」
「カナダの首都はオタワって、いい加減クドイので終わらして下さい」
「また始まった……」
「そうですね、ほっときましょう」
「オワタ」
リリーとエリカのお馬鹿なやり取りに呆れるクララとミラであった。 ボルトネックでも良いではないかワトソン君。
「ごきゅ ビールが美味しいねぇ」
「はう~ 幸せですう~♡」
途中から飲みに集中していた母子は揃って、幸せの吐息を吐いたのであった。