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ゴキュゴキュッ




ビールを飲んでロッテが真面目な顔をしながら一言、



「エリカさん……」


「なんでしょうか?」


「あたしんちの養女にならないかい?」


「はい?」



突然の問い掛けに目が点になるエリカだったのである。



「ちょ、ちょっと、お母さん突然なに言ってるのよ!」


「冗談よ冗談、それくらい、このビールには価値が有るって意味さ」


「確かに、このビールとやらには、それだけの価値が有りますね」


「エリカさん、魔力の方は大丈夫なんですか?」



リーゼは母の突然のもの言いに慌て、ミラはロッテの冗談に追随し、クララはエリカを心配して声を掛けた。



「みなさんの分だけを後二、三杯づつ冷やすのは心配ありませんけど、ここにいる他の人の分は面倒なので勘弁して下さいね」


「そうだね、面倒なのもあるけど、クララが言ったように秘密にしないと、違う意味でもっと面倒になるさね、この魔法は」


「まあ、その辺は上手くやりますとしか言いようがありませんけど、なんとかなるでしょう」


「私にやってみせた、威圧ですか?」


「あれは周囲全部にも出来ますけど、対象を絞っても出来ますから、周りの人は大丈夫ですよ?」


「そういえば、なんかやられてたね」


「あの時は、クララさんだけが対象でしたから、ミラさんはクララさんの様子がおかしい程度にしか感じなかったですよね?」


「そうですね、クララの尻尾が逆立ってましたから、ビックリして緊張しているのは分かりましたけど」


「ほう、エリカさんは威圧が使えるのかい?」



顎に手を置き目を細めてロッテが問うたのだった。



「ロッテさんも使えるんですか?」


「弱っちい相手にならね」


「私は威圧って意識して使ったわけではないですけどね、上手く説明出来ませんけど、普通に威圧したとしか言いようがありませんし」


「あたしもそうだよ、なんとなく感覚で相手を脅すとか威嚇するって感じかね?」


「そうですね、脅すや威嚇って言葉がピッタリですね」


「あれは怖かったですよー」


「なるほど、相手を脅すとか威嚇するのね。 それって普通じゃん?」



そうリリーが疑問に思って口に出した。



「ええ、普通に威圧しているだけって言ってますでしょ? でも、リリーは練習してからでないと禁止ですからね」


「はーい」


「お母さんに睨まれると、ちびっちゃいそうになりますよ。 あれが威圧でしたか」


「それは、リーゼが言うことを聞かないから悪いのでしょうが」



「しかし、このビールは美味しいですね。 エリカさん、あと三杯お願いできますか?」


「ええ、それは任して下さい」


「わ、私もお願いします!」



ミラのお願いに頷いてみせたエリカに対して、ここぞとばかりにクララも頼み込んだ。



「はい、みんなの分もちゃんと作りますから大丈夫ですよ」


「こりゃ、普通のエールが飲めなくなる気がするねぇ」


「ビールは私たちがいる間だけで、我慢して下さいね」


「そりゃそうさね、 ただで魔法を使ってもらってるんだから、それ以上を望めば罰が当たっちまうさね。 よし、此処にいる間は二人にエール5杯づつサービスするよ!」


「おー ロッテさん太っ腹ー」


「まだ、腹は出てないさね!」


「ありがとうございます。 では、遠慮なく頂きますね」



リリーが囃し立て、それに答えるロッテであった。 エリカは優等生よろしく、ちゃんとお礼を言っていた。



「ロッテさん、私の分はー?」


「私の分も……」


「あんたらは、最初から二割引いているでしょうさ」



クララが自分もと強請り、ミラも遠慮がちに追随したのだが、ロッテに一刀両断されたのだった。



「ですよねー」



「職員割引があるんだ?」



そう尋ねるリリーに対して、



「言い忘れてましたけど、直営の食堂は一般のギルド員でも、銅プレートで一割、銀プレートで二割、金プレート以上で三割引きになります」


「直営って言っても、この町には此処だけだし、他の町でも同じなんですけどね」



クララが説明して、それを補足するミラ。 



「なるほど、ギルドに貢献した分だけ、恩恵も大きいって事ですね」



割引の内容に納得するエリカであった。



「それがステータスってもんさね、宿の方は二割引きのままだけどね」


「おかわり持ってきたよー もっとも、上級者の人が他の人に奢ったりして、食堂的には売り上げが落ちちゃうんですけどね」


「お、サンキュ♪ リーゼ、それは言いっこなしさね。 ギルドの宿と食堂は赤字にならなければいいんだよ」



ジョッキをテーブルに置いて肩をすくめるリーゼに対して、どんぶり勘定を匂わすロッテであった。 経営はそれでいいのか?



「原価三割の法則なんてなかったんや」


「アイス5℃ 分離、H2CO3 はい、どうぞ。 一応、帳簿はありそうですけどね」



遠い目をしながらリリーが呟いたのに、ジョッキを冷やしながらエリカが答えた。



「帳簿は付けてますよ? 誰かさんがやらないから、私がですけど。 食堂の仕入れ値は平均でだいたい原価率三割五分って所ですね」


「リーゼさん、一杯奢ろうか? いや、奢らせて下さい。 お母さんは、いつも感謝してるのですよ?」


「私の苦労が分かればいいんですよ? わ、か、れ、ば 」



『この親子の力関係を垣間見た気がしたわ……』


『そうですね、真の裏ボスはリーゼさんなのかも』



リーゼとロッテのやり取りを、念話でヒソヒソと話すリリーとエリカであった。




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