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「さて、お風呂がないなら、どこの宿屋でも一緒ですから隣で十分ですよね?」
「そだねー 隣でいっか」
「すいませーん、部屋空いてますかー?」
「いらっしゃい、空いてるよ。 一人部屋で一泊30ベニー、二人部屋で45ベニーで、ご飯は別料金だよ」
出てきたのは四十路絡みの女性だった。
「ギルド員は割引があるってクララさんが言ってたんですけど?」
「ああ、ギルドカードを見せてもらえるかい?」
「どうぞ」
「リリーさんとエリカさんって家名持ちね、鉄プレートってことは新人さんだね?」
「はい、さっき登録したばかりなんです」
「ランクによってプレートに違いがあるのですか?」
「クララは教えてくれなかったのかい?」
「はい、聞いていません」
「あの子もしょうがないね、ランクFとEが鉄、D、Cが銅、B~BBBまでが銀、A~AAAが金で、S以上が白金って分けられているのさ」
「なるほど、プレートを見ただけで大凡のランクが、分かるわけですね」
「そういう事さね、銀プレートを持っていれば一目も二目も置かれるし、金プレート持ちだと、貴族でも媚びへつらうぐらいの存在なんだよ。 おまけに白金プレートなんざ、世界にたった三人しか居ない雲の上の人だよ。 あんた達も白金は無理でも金プレート目指して頑張んなよ。」
「はい、頑張ります!」
「が、頑張ります」
「うん、若いっていいねぇ、それで、ギルド員割引で一泊24ベニーと36ベニーだけど、どっちの部屋にするんだい?」
「エリカ、どうする?」
「二人部屋の方がお得ですし、そちらでいいのでは?」
「んじゃ、二人部屋で、何泊にしようか?」
「なにがあるか分かりませんし、とりあえず一週間は部屋を取っておきますか?」
「そうだね、おばさん二人部屋を一週間お願いします」
「お、おば、確かにおばさんだけどさぁ、あたしゃシャルロッテ、ロッテと呼んでおくれ。 こうみえてもBBランクの元冒険者だったんだよ、ほれ」
「ほぇー 銀プレートだ! 私たちの大先輩ですね」
「BBランクとは凄いですね。 『ついでに鑑定』」
名前:シャルロッテ
年齢:42歳
性別:女
種族:普人族
職業:冒険者ギルド職員
称号:【ハージマリの姉御(裏ボス)】
従属:ウィンザー王国ヨーク公爵領ハージマリ所属
ステータス
Lv:25
HP:848
MP:122
「門番の兵士さんより強いですね」
『う、裏ボスって……』
「確かに、纏っている雰囲気も違いますね」
『世話役って意味でしょ?』
「門番って犬人のヨハンかい? あの子ごほん、旦那には昔、稽古を付けた事があるから、昔はあたしの方が強かったのかもね」
「旦那さんだったんですか!?」
「いまでも十分に強そうですね、文字通り」
「冒険者をやっていて、"いきおくれた"あたしを貰ってくれた、いい旦那さんだよ。 それで宿泊は一週間でいいんだね?」
「それでお願いします」
「全部で2シルバと52ベニーになるけど、支払はどうする? 今日の分は前払いでお願いするけど、明日以降の分はその都度でも構わないよ」
「いま、全額お支払します」
「お、気前がいいね、2ベニーサービスして2シルバ50ベニーでいいよ。 50ベニーのお釣りだね。あと、一月以上滞在する予定なら、一か月契約が お得だよ。 二人部屋で一月9シルバで朝食はサービスさね」
「ありがとうございます、その時はお願いします」
「あいよー ほい、これが部屋の鍵で、水浴びがしたかったら、この突き当りの奥でできるよ。 ご飯は朝食が朝6時から10時まで5ベニーで食べれるよ。 夕食はメニューから好きなのを選んでおくれ、値段も手頃で味も、味は、まあ人それぞれかな?」
「人それぞれなんですね…… そこは、値段も味も保証すると言うところでは?」
「ロッテさんは正直なんですよ」
「二人とも家名持ちだからね、庶民の料理が口に合うかどうかは、流石に分からないよ」
「なるほど、リリー、一度部屋を見てから、少し早いですけど夕食を頂きますか?」
「うん、お腹減ったー」
「夕食のメニューは4時からってもう4時だね、食べれるから、部屋に荷物を置いたら食堂においで」
「はい」
こうして、二人は部屋へと向かったのであった。
「うん、まあ普通の部屋だな」
「普通の部屋ですね、値段の割には上等だと思いますよ?」
「三階だから、酔っ払いの喧騒も少しはマシかな?」
「そう思いたいですね、お腹も空きましたし食堂へ行きましょうか?」
「うむ!」
「完全に洋風居酒屋ってふいんきだな」
「そうですね、入った事はないですけど、知識としては居酒屋ですね」
「いらっしゃいませ~ メニューが決まりましたら声を掛けて下さいね、おすすめはホーンラビットのステーキとココットドリの唐揚げです」
犬人族の若いウエイトレスが声を掛けてくれた。
「どれどれ」
本日のおすすめ
ホーンラビットのステーキセット、パン、サラダ、スープ付:9.5ベニー
ココットドリの唐揚げセット、パン、サラダ、スープ付:8.5ベニー
「ねえ、エリカ」
「なんですか?」
「どう考えても、私たちって通貨の単位を一桁勘違いしていたよね?」
「そうですね、でもお金が減るよりも増える方がいいんですから、気にしないでおきましょうか」
「そだね、使えきれないほどあるけどね…… それよりも、ホーンラビットは、エリカは美味しいって言ってたよね?」
「ワイルドボアや各種ベア系よりも、クセがなく柔らかくて食べやすいと思いますよ?」
「そっか、じゃあ半分こして食べない?」
「は、半分こ、じゅるり、わ、分かりました」
「エリカ、目が怖いよ」
「キ、キノセイデスヨ?」
「しかし、やっぱしというべきか、米粒らしきモノは見当たらないな……」
「テンプレってヤツですね。 でも、米なら東方大陸では、食べられているみたいですよ?」
「マジでか! 良かったー 米がなければ麦を食えでは死んじゃうトコだったよ」
「貧乏人は麦を食え」
「それ違うから」
「米はある、米はあるが、それがジャポニカ米とは言ってない」
「ざわざわしそうな言い方はやめて下さい」
「インディカ米みたいなのしかなくても、魔法でちゃちゃっとなんとかできますよ多分。 私もリリーが食べていた日本の米を食べてみたいですから」
「米品種改良特命委員長はエリカに任せた!」
「任されました!」
「ということで、お姉ーさん、ホーンラビットとココットドリのセット一つづつ下さい!」
「はーい、少々お待ちください」
「あと、エールでも飲む?というか、飲んでみたい。 異世界といったらエールが定番っしょ」
「そうですね、頼みましょう」
「うむ、すみませーん、エールも二杯下さい!」
「はーい、わかりましたー」
ワクワクテカテカ
「お待たせしました、はいどうぞ」
「これが噂のエールか」
ゴクッ