表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/30

SECT.16 ゲーティア=ゼデキヤ=グリモワール

 お城の中をどう歩いたのか分らない。きっと一人放り出されたら二度とこの建物から出られないだろうと思った。

 いくつも扉をくぐって、階段を上って、長い廊下を歩いて行き着いた先は今まで見た中で一番大きくて豪華な扉の前だった。黒い翼の獅子が彩る紋章が掲げてある。

 これがグリモワール王家の紋章なのだろうか。

 目の前で扉が開いた。

 明るい光が差し込んでくる。

 ねえちゃんとアレイさんがゆっくりと扉の中に足を踏み入れた。

「ただいま参上いたしました」

 二人が赤い絨毯に膝をついて挨拶した。

 ふいと見上げると、目の前の壇上に大きな椅子に座ったおじさんがいた。その背後が窓になっていて光が差し込んでいる。逆行でよく見えないが、重そうな冠を頭に載せて、暑そうな毛皮のマントを羽織っていて、口ひげをたくわえていて……その姿が絵本の世界で見た王様そのもので少しおかしかった。

 その壇の下には左右に一人ずつ騎士が控えていた。純白の甲冑に身を包んだ騎士と、漆黒の甲冑に身を包んだ騎士。身の丈以上ある槍を持ち、身じろぎ一つせず直立不動で立っていた。

 ぼーっと壇上のおじさんを見上げていると、ねえちゃんとアレイさんはもう一度立ち上がって進み出た。

 おじさんがいる壇の真下まで来て、もう一度頭を下げる。

 とりあえず、慌てて二人に付いて行き、見よう見まねで膝をついた。

「堅苦しい挨拶はよい。今回はグリフィス家の末裔にグリモワール王国レメゲトンの位と使役するコインを与えるために呼んだのだ」

「はい」

 ねえちゃんは自分のほうを振り向いて、前に進むよう促した。

 仕方がないので立ち上がってねえちゃんとアレイさんの間を通り、壇に近づいた。

 すごく上のほうから、光とともに声が降ってきた。

「名は?」

「ラックです」

 まぶしい。思わず目を細めた。

「ふむ。少女と聞いていたのだが?」

「申し訳ございません。なにぶん急なことで正装は間に合わず……」

「そうか」

 その声から何の感情も読み取れなかった。年齢も分りにくく、すごく低くはないけど高くもない、特徴のない声に聞こえた。

「少女、これからはグリフィス家の末裔としてラック=グリフィスを名乗るがよい。グリモワール王国レメゲトンの位と、第2番目の悪魔アガレスのコインと第64番目の悪魔フラウロスのコインを授ける」

「……ありがとうございます」

 なんだかよく分からなかったが、とりあえず頭を下げてみた。

 部屋の横にある扉が開いて、女のヒトがお盆を持ってこちらに向かってきた。

「第2番目の悪魔アガレスは地震を、第64番目の悪魔フラウロスは地獄の業火を操るという。グリモワール王国のため、我がために日々精進せよ」

 女のヒトが持ってきたお盆には二つのコインが乗っていた。

 貰っていいのかなと思ってねえちゃんを振り向くと、ボーっとしてないではやくコインをとりなさいと目で叱られた。

 お盆の上からコインを貰って、ねえちゃんとアレイさんの後ろに下がった。

「下がってよいぞ。詳しいことは後ほどヴァイヤー老師が伝えるだろう」

「はい」

 最後に部屋を出るときもう一度3人で深く礼をしてから、その広間を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


シリーズまとめページはコチラ
登場人物紹介ページ・悪魔図鑑もあります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ