エドウィン=カーターという男
僕と彼女が初めて出会ったのは、僕が十七で彼女が十五のときだった。
十八で成人と認められるこの国で、成人までのこすところあと一年とになった僕は、忙しい父の代わりにカーター家の代表として、社交の場へ参加するようになったばかりで。
それが本格的な大人の仲間入りへの準備をしたような心地で、その喜びと緊張にけぶる……そんな少年だった。
カーター家にはありとあらゆる場所から招待状が届いた。
成り上がりの我が家を浅ましく思う者がいる一方、金がすべてものをいうこの世界で、上流階級の者たちにとってカーター家は捨て置けない存在だったのだろう。
毎日届く招待状。できるだけそのすべてに参加するよう、僕は心がけていた。
なぜならば。人が集まれば情報が集まる。それが特有の人間がしか集まらない場であれば、そこで得られる情報は貴重性が増し、思わぬ武器にとなれば、金にもなるからだ。
また、顔を売り人脈を広げるのは商売の伝手を広げるための近道であり、それは事業家にとって事業家であり続ける限り決められた約束ごとのようなものであった。
父の仕事を手伝いをはじめたばかりのこの頃の僕はまだ歳若く、名も顔も知られていない。
だから、とにかくこの頃は金の匂いがする場所ならどこにでも顔を出す。顔を売って人脈を広げ――それがいつかの勝機の糧になると信じて。
だが、どこに行ってもある一定数は居る、位を持たない者へ偏見を持つ者。
ただ高いだけの身分を誇り鼻にかけるような者から向けられる侮蔑の色や嘲りは、もちろん僕にも向けられる。
それでも、社交界に何度も足を運び場数を踏んだ僕は、時折ぶつけられるあからさまな嘲笑や侮蔑の目も、これも勉強の一環だと、そう割り切れる程度の強さを、身につけられるようになっていた。
商売人にとって、一番の価値は金であって誇りではない。ただ税を食いつぶすだけのお飾り貴族なんかよりはずっとマシな生き物であると、僕はそう思っている。
つまりはそれが誇りとなって、僕に自信を与えてくれたのだ。
不利な立場であろうとも、積極的に社交界のへと足を向けられたのも、そんな自信があったおかげだろう。
そんなしたたかさを身につけ、挑むように夜を渡り歩いていた僕はある日のパーティーで、僕は彼女と出会ったのだ――アマンダ=アディソン、運命のその人に。
それが誰が催したパーティーだったかお茶会だったかは、もう覚えていない。
ただ、初めて彼女を見た時の、その鮮烈で奇跡的な感動だけが、切り取られて額縁の中に閉じ込めたかのように、鮮明に僕の中にいまでも残っている。