1-2話
友達に真顔で「働かないで食う飯はうまいか?」って言われました。
涙がでました。
名前に桜が入っているだけあって、校内は下り坂以上に桜でいっぱいだった。
校門から校舎へと続く道は、地面が見えづらいぐらい桜が降り積もっている。
なるほど、これが名前の由来か。
「いやーそれにしても今日から俺達も二年生だな」
「そうだね、ということはクラスも別々《べつべつ》になっちゃうかもしれないんだよね」
「まあな」
「そだねー」
「二人と別々になるのはやっぱり少し寂しいよ、出来ればまた一緒がいいよね」
僕のこの言葉に、二人は何かを考えこむかのようにしてうつむいた。この二人とは1年の最初の頃から仲がよかったので、少し寂しいというのは結構本当の事だったりする。きっと二人もそう思ってるはずだ。
「そうか? 俺は春樹とは出来れば別々になりたいと思っていたがな」
あれ?おかしいな。
「友真もそれは思ってた」
「どうして友真まで!? いったい僕がいったい何をしたって言うんだよ!?」
「何をした……だと!? そんな事も覚えてないのかこのバカは」
「自分の胸に手を当てて考えるべきだよ」
胸に手を当てて……、えーと、二人の態度が変わったのは……、変わったのは……、のは………………。
「今日……?」
「今日も何かしたのか!?」
この反応はどうやら違うみたいだ。うーん、それじゃあ考えられるのは……
「もしかして終業式?」
「そうだ」
終業式……終業式ねえ……、あぁ、思い出した思い出した。
「えーと、あの時はねえ、三日徹夜しててほとんど意識がなかったんだよねー。 それで歩くこともままならなかったから、姉さんに送り迎えをしてもらったらしいんだ」
らしいというのは、僕はその時の記憶が全くないからだ。
「それが原因だよ……」
「いやー、あの時はオンラインゲームが白熱してさー、ッてそんな事より、そんなにひどいことを僕は双侍と友真にしたの?」
あの時は意識が朦朧としていてほとんど覚えてないんだけど、この二人の対応から見てどうやらかなり酷いことをしたみたいだ。
「いや……、俺達には何もしていないんだがな」
「じゃあなんで?」
ますます分からなくなってきた。
「説明してほしいか?」
「そりゃ、もちろん」
説明してほしいに決まっている。身に覚えのないことで避けられるのは嫌だからね。
双侍と友真が、僕には聞こえない程度の声で相談している。
「そういえば春樹、今は男と女どっちが好き?」
「好きなタイプは巨乳と貧乳! 普通の乳に興味ナシ!」
友真の質問にたぶん今年一番の良い顔で即答する。
「……どうかな? 双侍?」
「ここまでキッパリと即答するんだったら疑いようはないな。 よかったな春樹、お前は小バエからハエに格上げされたぞ」
「アハハッ、うれしいよ」
どうやら、僕に本当の事を言っていいのかどうかの相談だったようだ。
双侍の言葉にはイラッとしたが、今は説明してもらうのが先決だ。この様子だと僕への疑いは晴れたようだし。
「じゃあ話してくれるんだね」
「いや、めんどくさい」
「よし、ブチ殴る」
説明しないんだったらもう我慢の必要はない!右拳に全ての力を集約させる。地球の皆!オラに力を分けてくれ!
「待て待て待て! 説明はしないがちゃんと教えるって!! 友真、あれを渡してくれ」
「わかった」
そう言って一枚の写真を僕に手渡した。
そこに写っていたのは一人の女。詳しく説明するなら、遠くから撮っていて顔はよく見えないが髪は短く、肌は色白で、昔姉さんが通っていた女子校の制服を着ていた。
「これがどうかしたの?」
「これは終業式の時の写真だ」
ふむふむ……確かに他校の生徒が終業式に来たら話題にはなるだろう。しかしそれと僕にいったい何の関係が……?
「これが拡大したものだよ」
そう言って友真がもう一枚写真を僕に手渡した。
「……………………え?」
そこに写っていたのはまぎれもなく女装をした僕だった。
字が間違ってたり、わかりづらい表現があれば教えていただけると嬉しいです。