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3姫

大和撫子の身が危ない、、、


 松郷ちはるはすでに学校中の衆目を集めていた。


 彼女が歩けば皆が見とれた。彼女と遭遇するためにわざと行く手を先回りするものもいるほどで、彼女の通る道で人気がないところはないほどだった。


 しかしこれといって彼女が簡単に男どもに接触されなかったのは、常に行動をともにする女子の友人たちの力であろう。彼女は幸いなことにその美貌をねたまれることがさほどなく(実際初めの内はそのような嫉妬深い女子の目にさらされもしたが、なぜか結局は心を開くらしい)、彼女の青春を彩るにふさわしい数人の才女とともに過ごしていた。


 そろそろラブレターの一つや二つもらってもおかしくはなさそうだよな、と僕はなんの気なしに言った。しかし次郎は真面目に答えた。

 「いや、実際ラブレターを出しているものはいるらしいが、すべてつぶされている」

 

 つぶされている、とはどういうことなのか。

 「生徒会だ」

 「生徒会がなんでそんなことしてるんだよ?」

 「彼女が転校してきたとき、先生方が風紀の乱れを懸念したらしく、生徒会に学校内の混乱を抑える方向中心に活動するよう言ったらしいんだな」


 というわけで彼女の生活に支障をきたしかねない、日に十通を超えるラブレターは彼女の目に触れぬままに破棄されているらしい。


 「さすがに生徒会も恨まれそうだね」

 「それをうまくやってるらしいな。これはなんとか生徒会にいる奴になんとか聞き出した情報だからオフレコな」


                  ○



 日曜日だというのに僕は朝から部活に駆り出されていた。僕はレギュラーでも何でもないのだが、うちは県内でもなかなかの強豪のテニス部なのでしかたがない。


 「聞いたか。ちはるちゃん映画研究部に入ったらしいぞ。」

 水道でくたばっていると、僕と同じくレギュラー外の千秋が声をかけてきた。

 映研とはあまり聞き捨てならない話だ。なにしろ部活に入りたがらない連中が、入部を強制する学校側に形だけ繕うために映画研究部に籍だけ置くことがよくあったのだ。その中にはあまり好ましくない経歴を持つ者も少なからずいた。

 

 「ホントか?」

 「どうやらホントらしい。何しろ次郎の情報だからな」

 次郎の情報収集は早い。主将である彼を取り巻く2、3の仲間は特に頭が切れる連中で、しばしば探偵まがいのことをやってのけていた。中には弁護士を志す者もいるほどだ。


 とにかく僕らはつまらない練習を午前で逃げ出して状況を調べに行った。

 実のところはじめ僕はそんなに彼女の動向に興味はなかったのだが、周りがあまりにも大きく騒ぐのでちょっと気になりだしていたのだ。


 

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