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花冠の夏休み

「コウ、来たよ!!」

ノースリーブのワンピースを着た私は、真っ直ぐにコウの元へ走って行った。

「途中で花を摘んで来たの!」

ニコニコ笑ってみせると、コウも少し笑ってくれる。

「今日は機嫌が良いな」

「だって、夏休みだもん!嬉しくなるよ!!」

「夏休み?・・・ああ、家族で旅行でもするのか?」

「ううん。お父様は忙しいし、時間もとれないから、今年もずっと家にいるよ?」

「・・・今年も」

コウが呟くように言う。

「うん。去年も、一昨年も。ここ最近旅行にいってないなあ」

懐かしく思いながらコウを見る。そして驚いた。

あの獰猛な獣の様な眼をしていた。

「コ、コウ?」

「・・・ああ、悪い。なんでもない」

私が呼ぶと、コウはまたいつもの顔に戻った。

私はほっと安堵して、草むらに座る。

行きで摘んできた花々を組み合わせて、花冠を作る。

「手馴れているな」

「うん、好きなんだ。季節の花で冠作るの」

笑いながら言うと、コウは少し笑った。


「・・・よし、できた!」

じゃじゃーん、と花冠をコウに見せた。

それを自分の頭に乗せた。

「どう?似合う?」

「まあ、人並みに」

「どういうこと!?」

「・・・嘘だよ、可愛いな」

少し目を細めてほほ笑むコウ。ドキリとした。

「じ、実はね、コウにも作ってあるの!」

私はわたわたと格子の間からコウ用に作った花冠を渡した。

「かぶってみて!」

「・・・こう、か?」

手錠のされた両手で悪戦苦闘しながら花冠をかぶるコウ。

「うん、コウも似合うよ!可愛いかも」

「男に可愛いなんて使わないだろ、普通」

「思ったことを言うことは良いことだってお父様から教わったよ?」

何気なく言うと、コウは顔を顰めた。

優璃(ゆうり)

「何?」

「悪いが、俺の前で『お父様』の話はやめてくれないか」

「あ・・・」

そうだった。コウはお父様の事が憎いんだ――――。

「うん、わかった。ごめんね?」

「いや、いいんだ。ありがとう」

コウは少し微笑むと、

「今日はもう帰れ。長い間日光に当たるのは良くないからな」

「あ、うん。じゃあね、コウ」

軽く手を振って家に戻る。


・・・なんか、帰らされた感が否めないかもしれない。


そんなことを思いながら、じわじわと募るこの気持ちの昂りを感じていた。

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