雨と傘と獣
雨でじとじとした雰囲気の中、ひとりの少女が檻の前にいる。
「・・・優璃、風邪ひくぞ」
「大丈夫、平気」
雨が降る中傘をさして檻の格子に手を触れた。
ひんやりとして、冷たい。
「コウ、ここを出ない?」
「・・・何を、言っている」
「私ね、コウをここから出したい。自由にしてあげたいの」
つつ、と格子を指でなぞる。
「馬鹿な真似はやめろ。俺はこのままで良い」
「私が・・・!」
『私が嫌なの!!』
そう言いかけてやめた。
ダメ。今伝えたら、ダメ。
「・・・?」
「なんでも、ない。・・・でもね、本当だよ?ここから出したいっていうのは」
「俺も本当だよ、ここから、出たいのは」
「でも・・・!」
「もうこの話はやめよう。優璃」
コウが優璃を呼んだ。
「何?」
「ありがとう。今日はもう帰れ。お前に風邪をひかれたら、俺が酷い目に遭う」
「・・・うん」
こくりと頷く。その事実は否めない。
「あ、コウ。これ、あげる」
そう言って優璃が差し出したのは、折り畳み傘だった。
「・・・?なぜだ?」
「コウも風邪ひくと困るでしょ?だから」
「わかった。ありがとう」
本当は傘なんかなくても濡れたりはしないけど。
そんな事を思ったコウだった。
それから少し他愛ない話をして、
「じゃあね、コウ」
優璃は小さく手を振って、走りながら去って行った。
檻の中に残された獣は思う。
あの時、懇願していたらどうなったのか、と。
考えようと思って、やめた。
なぜだか、今の生活が酷く心安らぐから。
・・・どうや長いと続かないみたいです、明夢です( ´_ゝ`)
1話で1ヶ月、計12ヶ月です!
この話もさっさと終わらせたいので、ショートショートです。
ごめんなさい\(^o^)/