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檻の外と中の二人

「コウッ!」


「・・・優璃?」

声が少し震えた。優璃は俺の眼を真っ直ぐ見つめた。

「どうして、ここに?」

少女の服装は綺麗なドレス姿で、髪形も可愛らしくまとめてあったのだろう。

走って転んだのか、服も髪もぐちゃぐちゃだ。

優璃は檻に近づいてきて、格子を握った。

「逃げよう、コウ」

「逃げ・・・?何を言ってるんだ?」

「鍵を持ってきたの。今開けるね」

鍵をポケットから取り出して、錠前に鍵を差し込んだ。


ガチャッ


鍵が開いて、格子の扉が開いた。

「手錠と足枷も外すね」

優璃は檻の中に入ってくるなり、他の2本を使って俺の手錠と足枷を外した。

「どうして・・・」

「コウ、貴方は人を殺してない。無実の罪で囚われているだけだったんでしょう?」

「・・・」


この少女は、俺を信じたのか?

実の父親よりも、俺を?


「だからね、そんな事で・・・どちらにしても、コウが死ぬのは嫌なの!」

「どうして、そこまで俺の事を信じられる?何故、ここまでできる?」

手枷も足枷もなくなった俺は、優璃の肩をつかんだ。

優璃は俺の手を握って、少し赤い顔で笑った。


「私ね・・・私、コウが好きなの」


発せられた言葉は、にわかには信じられない言葉だった。

「・・・え?」

「本当だよ?私、コウが好きなの」

俺よりも年下の少女は、俺よりも強い意志で俺の事を見つめた。

「・・・ありがとう」

そう呟くのが精いっぱいだった。

「ありがとう、優璃」

「・・・・うん」

優璃は何かを思ったのか、少し寂しそうな顔をした。

「返事、しなきゃな」

「え」

思いっきり抱きしめた。久々に人に触れた。暖かくて、泣きそうになった。

「ありがとう、優璃。


・・・待っててほしい。絶対に迎えに行くから」


「!・・・うん、待ってる・・・!」

優璃が俺の事を抱きしめ返す。暖かいものが服にしみた。

「私の16歳の誕生日に迎えに来て。待ってるから」

「わかった。絶対に行く」

抱きしめるのを終えたあと、優璃は目を閉じた。

それに少しドキッとしたが、平常心。


額に口づけると、優璃は少し不服そうな顔をした。

「なんでおでこなの?」

「こっちは、迎えに来たときに」

そう言って唇に触れる。柔らかくて、暖かい。

「・・・うん」

その動作にぎくしゃくしながら、優璃は思い出したように言った。

「コウ!早く逃げなきゃ!」

頷いて、牢屋から出る。

歩くのは久しぶりだった。少しよろめいた。

「大丈夫?」

「ああ・・・ありがとう」

優璃に支えられながら、外の風景を見た。

裸足で雪の感触を確かめる。

「外だ・・・」

今までは冷たいコンクリートの上だったのに、今は地面に歩いている。

「コウ、もういかなきゃ・・・」

その恰好から考えて、パーティか何かから抜け出してきたんだろう。

そうだな、と言おうとした瞬間、

「バウワウッ!!」

と、遠くから吠える声が聞こえた。

「?」

茂みから犬が飛び出した。優璃に飛びつく。

「いた!」

嬉しそうにその犬を抱きしめる優璃。

「優璃」

名前を呼ぶと、寂しそうな顔で微笑んだ。

「・・・またね、コウ」

そう言って手を振る優璃。

「また。絶対に迎えに行く」

優璃は俺の眼をじっと見て頷いた。

それを見た後、俺は林の暗がりを駆け出した。


そのまま門へと向かい、開いてるのに気が付いてそのまま駆け出した。

おそらく優璃がやってくれたんだろう。

ありがとう、優璃。

そのまま俺は、闇夜を駆け抜けていった。



「優璃様!」

私は愛犬を抱えて林とは別の所から戻った。

「こんなに汚して・・・お怪我はありませんか!?」

「大丈夫だよ、少し擦りむいただけだから」

明るく言うと、周りの人たちはそれぞれ反応を見せた。

心配をする人もいれば、困ったような顔をする人もいれば、怒る人もいた。

その人たちに謝ってから、私と許婚さんの婚約パーティの続きがなされた。



その一月後、コウの処刑をしようとした人たちが空っぽの檻を見て、私の仕業だと気づき、

16歳の誕生日まで軟禁状態にされた。

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