えみの過去
私は先天性のてんかん持ちだった。私が高校生に上がった一年目の事、学園祭が楽しみで仕方なかった私は、積極的に学園祭に向けての活動を行っていた。私のクラスの出し物はクレープ屋さんだ。
「えみちゃん、イラスト上手!」
「ありがとう。クレープの絵を書くのって難しいね」
「えみ~、原価計算の仕方が分からないよ~」
「原価計算は、まず直接費と間接費に分けて…」
「ふーむ、なるほどなるほど。ありがとう、えみ」
あの頃の私は輝いていた。何をするにもスムーズで、いつしか私はクラスで重要な役割を担わせてもらっていた。学際前日、いつにも増して忙しかった。そんな中で迎えた当日、私は発作を起こしてしまった。今まで忙しくしていたツケが回ったのだろう。
「えみちゃん!大丈夫?」
「保健室の先生呼んで!」
私はそこで意識を失ってしまった。
保健室で目を覚ますと、先生が静かに近づいてきた。
「発作が2~3分で収まったから、救急車は呼ばなかったんだけれど、調子はどう?」
「大丈夫です」
私は静かに起き上がる。
「うん、顔色も大丈夫。もう学園祭の片付けの時間だけれど、戻る?」
「戻ります」
少しでも、発作で迷惑を掛けた分を取り戻したい。私はその一心で、教室に向かった。教室のドアに手を掛けようとしたとき
「えみちゃん、大丈夫だったかな?」
「大丈夫だといいね。でも、売り上げ一位を目指しているのに、ああいうのがあると迷惑」
「だよね」
そんな声が聞こえた。迷惑を掛けた自覚はあった。けれど、はっきり言われると、私はドアを開けられなかった。
あれから4年。高校生の頃の記憶が怖くて、去年にあった大学の学園祭は休んでしまった。やっぱり今回も休もうと思い、かける君にメールを打った。
「やっぱり、今回の学園祭も休むよ」
すぐに返事が返ってきた。
「理由を聞いてもいいですか?」
私は高校の時の話をした。
「なるほど。今回も『迷惑だ』と言われることが怖いんですね」
「うん」
「それに関しては大丈夫です。僕がそんなこと言わせません」
間髪入れずに次のメールが届く。
「えみ先輩の健康管理は僕が徹底的に指導しますし、なにより『迷惑だ』と言わせる空気に僕がさせません」
私は涙が出た。
「なんで、そこまでしてくれるの?」
「僕はえみ先輩の『ありがとう』に救われました。本当の自分を取り戻せた気がするんです。なので、その恩をえみ先輩に返しているだけですよ」
「私はそんな、大それたことはしてないよ。お礼を言うなんて普通だし」
「その普通に救われる人が居るんですよ。えみ先輩の幸せのために、一緒に戦わせてください」
私のスマホを握る手に力が入る。学園祭は怖い…でも…
「私と一緒に戦ってください」
私はそう返事をした。




