【番外編】偉大なるポチの有能な一日
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
わたしはフェンリル。真の名前は他にある。
いまは、偉大なるポチという名を名乗っている。リリアナの姉御からもらった、最高にクールな名前だ。
かつてのわたしは、ただ強いだけのツッパリ野郎だった。
魔獣の頂点に立ち、強さこそがすべてであり、自分がナンバーワンだと信じて疑わなかった。
力でねじ伏せ、牙で引き裂く日々を送っていたのだ。
しかし、違った。
姉御は規格外に強く、それでいて底なしに優しかった。
わたしにはない、本物の強さを持っていた。
ふっ。その魅力に、わたしはあっさりと屈してしまったわけさ。
冷たい雪原で震えていた魂が、姉御の温かい手で溶かされたのだ。
おっと、勘違いするなよ。
わたしのナンバーワンは、いつだって姉御の幸せだ。
力ずくで男から奪うなんていう、野暮な真似はしないんだぜ。
まあ、姉御が独り身なら、迷わずアタックしていたところだがな。
極上の肉球を武器に、骨抜きにしてやったはずだ。
◇
わたしの優雅な日常の話をしよう。
本邸のリビングには、今日も甘ったるい紅茶の香りが漂っている。
姉御はどうにも、ツンデレというやつらしい。
ジークフリートの旦那への愛情はダダ漏れなのに、まったく素直になれないのだ。
「勘違いしないでよね! あんたのためじゃないんだから!」
今日も今日とて、姉御は顔を真っ赤にしてそっぽを向いている。
旦那は困ったように笑いながら、幻の尻尾をパタパタと振っていた。
焦れったい二人を見ていると、背中が痒くなってくるぜ。
ふっ、仕方ない。わたしは愛する姉御のために一肌脱ぐとしよう。
毛皮は脱げないがな。
「おいたわしや」
部屋の隅から、血の涙を流すルナ嬢が飛び出そうとしていた。
エルフのメイドは、愛の邪魔をする気満々でミスリル包丁を握りしめている。
わたしは音もなく背後に回り込み、その顔面に極上の肉球を押し付けた。
「ふぐっ!?」
ルナ嬢の悲鳴が、肉球の弾力に吸い込まれて消える。
マイナスイオン効果で、彼女の殺意がふにゃふにゃと溶けていくのが分かった。
わたしはそのままルナ嬢を床に転がし、旦那の背後へと歩み寄る。
そして、絶妙な力加減で前足を振り上げ、旦那の背中をトンッと押した。
「おっと!」
旦那がバランスを崩し、前方にいた姉御に向かって倒れ込む。
姉御の体がビクッと跳ね上がった。
「きゃっ!」
見事なハグの完成だ。
姉御は旦那の広い胸の中にすっぽりと収まり、ゆでダコのように顔を沸騰させた。
「ちょっと! 離しなさいよ、このバカ犬!」
「す、すまないリリー! でも、君が温かくて」
口では文句を言いながらも、姉御は旦那の背中にしっかりと腕を回している。
ふふすん。最高に幸せそうじゃないか。
ふっ、よかったな姉御。
末長く爆発してくれよ。
わたしは短く鼻を鳴らし、静かに部屋を後にした。
おっと、礼はいらないぜ。
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