年下最強騎士団長は、年上平凡事務官の事を知りたい
平凡事務官オリバーと、最強と呼び声高い騎士団長の話。
「え?オリバー・フォン・ルッツですか?」
「ああ、確か学園で同期だったな。彼はどんな人物だった?」
恋人の過去を知りたくて、つい尋ねてみた。
大半の人はこう答えた
『目立たない、真面目な普通の生徒。』
でも、中には違う反応を示す者もいる。
「彼は、然るべき家の養子になれば宰相に手が届くほど優秀だ」
それも凄い話だが、背筋がぞくりとするのは、こう言った人の声だ。
「アレは…怪物です」
怪物――その言葉を反芻する。
あんな穏やかな彼が?とも思うし
たまに見せる冷たい雰囲気を考えると納得してしまいそうになる。
「オリバー、君は何故騎士にならなかった?」
「なんですか?藪から棒に」
「いや、君が学生時代、剣術のトップだったと聞いてな。君が騎士試験にいなくて安心した、とまで言う者もいた」
…学生時代から、彼は他の誰とも違ったのだろうな。
「…ああ、それは彼かな。まだあの時のこと、恨んでいるのでしょうか?」
「何があったんだ?」
「終了だと宣言があったのに、剣を向けてきたので、お仕置きしました。騎士を目指すならルールは守るべきですし、学生としても謝れないのはダメでしょう?」
目の前の笑顔は柔らかいけれど、その目は笑っていない。
それを見た瞬間、心臓が跳ねた。
「…それは、そうだな」
「あ、もちろんすぐ直しましたよ。綺麗に壊せば、綺麗に直せますからね。」
綺麗に壊す…?言葉の裏に、言い知れない恐怖が隠れていそうだ。
「あっ!」
急な彼の声に肩が跳ねる。
「な、なんだ?」
「腕の調子はどうですか?」
「次の日は少し怠かったけど、問題ない。」
「そうですか。それは良かった。でも――」
その「でも」が、空気を一瞬で冷たくする。
冷や汗が背筋を滑り落ち、ゴクリと喉が鳴る。
「もし、また、不調を隠そうとしたら…僕は、怒ってしまうかもしれません。」
穏やかな口調、変わらぬ笑み。
だが目だけは冷たく澄んでいて、全てを見透かされているように感じた。
「!か、隠さない!ちゃんと伝える!や、約束します!」
「ええ。騎士の鑑である騎士団長が、約束を破ったりするはずありませんよね?」
全力で頷く。
胸の奥で雷より鋭い何かがビリビリと走ったのを感じた。
「ドラゴンより、怖かった…」
恐怖から涙目になるアウグストをオリバーは苦笑いしながら頭を撫でた。
アウグストは思う。平凡な事務官があんな圧を出せる筈がないと。
しかし、それを引き出したのが『自分への心配』なのが、嬉しくてにやけてしまう。
知れば知るほど、惚れ直す気しかしない。




