Arrivederci ドルチェ・デュオ
その日の夜、怪盗を引退して初めてのステージに立ったマリアは、数年ぶりに純粋な気持ちで歌い終え、満たされた気持ちで控え室に戻った──その時だった。
「よう、マリア。せっかくだから俺も足を洗うことにしたよ。」
聞き覚えのある声に呼び止められ、驚きと共に振り返ると、そこにはカイルが立っていた。
「カイル!? どうしてここに!? それに、今の言葉って、あなたも怪盗をやめたってこと!?」
興奮気味に捲し立てるマリアに、カイルは苦笑いしながら応えた。
「まあ、そんなところだ。お前を応援する上でベストな立ち位置は何かと考えたら、歌姫マリア専属の照明スタッフだろうと思ってな。普通に考えたらマネージャーかもしれないが、引き立て役としてはこっちの方がいいだろ? お前の所属事務所に直談判したら、快く受け入れてくれたよ。」
笑顔のカイルとは対照的に、その話を聞いて涙がこぼれ落ちるマリア。
「カイル……本当に馬鹿なんだから……。でも、ありがとう……あの時のあなたの告白、本当に嬉しかった。今度は私から言わせてほしいの……私もあなたが好き。」
カイルの顔に驚きと喜びが広がり、彼は一歩マリアに近づいた。「マリア……」
彼女もまた一歩前に進み、二人はそっと手を取り合った。控え室の静かな空間の中で、二人の心はひとつに結ばれた。その瞬間、過去の怪盗としての人生が遠く感じられ、これからの未来に向けた希望と愛が胸に満ちていった。
「一緒に新しい未来を築いていきましょう。」
「もちろんだ。お前となら、どんな未来だろうと進んでやる。」
こうして二人は、怪盗としての過去を乗り越え、新たな未来へと歩み始めた。歌姫マリアと彼女の支えとなるカイルの物語は、これからも続いていく。