Act.2 アッチェレランド
「とにかく、お目当ての品はいただいたから、一度安全な場所に保管して次のショーに備えなきゃね。」
マリアは控え室に戻り、天井裏に宝石を隠した。そして再び歌姫としてのステージ衣装に着替え、華やかなホールへと戻った。
舞台に上がると、マリアは一瞬、心を落ち着けるために深呼吸をした。その後、彼女の美しい歌声が再びホールを包み込み、観客たちを魅了していった。
今夜のパーティーの最後の出番を終えたマリアは、華やかな笑顔を浮かべながら、ハドリーをはじめとした出席者たちとの交流を一通り済ませた。優雅な振る舞いと完璧な社交術で、彼女は誰からも怪しまれることなくハドリーの邸宅を後にした。もちろん、これも自分に疑いが向かないようにする彼女の作戦の一環だった。
外で見送るハドリーたちが屋内に戻るのを確認すると、マリアはすぐさま行動を開始した。近くの陰に身を潜め、黒ずくめの怪盗リアムの服装に着替えると、彼女は再度邸宅への侵入を試みた。周囲を見渡し、警備が比較的手薄なプール周辺から静かに忍び込む。
夜風が静かに揺れる中、リアムは軽やかに動き、邸宅内の控え室へと向かう。暗闇の中でも彼女の動きは迷いがなく、確実に目的地に近づいていった。控え室のドアを音もなく開け、天井裏に隠した宝石を回収する。全てが計画通りに進んでいた。
宝石を安全にバッグに収めると、リアムは一瞬の満足感に浸った。しかし、油断は禁物。彼女は慎重に控え室を後にし、再び警備の目を避けて邸宅から脱出した。成功の喜びと次の計画への意気込みを胸に、マリアは夜の闇に紛れて静かに姿を消した。