第99話 勇者よ……療養しろと言っている
魔王城・謁見の間。
魔王は朝の報告書を開くと、眉をひそめた。
「……またか」
勇者が顔を出す。
「なぁ魔王〜。なんか今日は人間国からの書類、多くね?」
「多いどころか、ほぼ全部“お前関連”だ」
「えっ!? 俺なにか問題起こした!?!?」
聖剣『むしろお前が今まで何も問題を起こしていなかったのが奇跡だな』
魔王はため息をつき、一通の書状を読み上げる。
「人間国より。
“勇者の疲労蓄積を深刻に捉え、しばらく魔王領にて 静養させることを推奨する”」
勇者「俺療養扱い!!?」
魔王「そして続きがある。“魔王領は医療先進地として認め、勇者の治療を委託する”と」
勇者「えっ医療先進国!?いつの間にそんな設定出来たんだ!?ちょっと前反逆者扱いだったのに!?」
魔王「温泉効果だ」
勇者「えええぇぇぇぇ!!?」
聖剣『お前は温泉の宣伝に貢献しすぎている』
勇者「……温泉ってすげぇな」
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◆魔王領の会議が急遽開かれる
側近「魔王様! 人間国から第二報!」
魔王「…今度は何だ」
側近「“勇者を無理に働かせないように”という 注意勧告 です!」
勇者「俺何気に虚弱扱いされてない!?!?」
魔王「あいつら……私達よりお前の体調管理に必死だな」
勇者「なんで!?」
聖剣『お前を軍事利用されないようにする為の口実だろ』
側近はさらに震える声で言った。
「そして……“魔王領が勇者を健康に戻した功績を評価し、感謝状を贈る予定”とのことです」
勇者「魔王領、もう完全に“保養地”扱いじゃん!!?」
魔王「……我が国に対して上から目線なのは気に食わないが、悪くはないな。経済効果が期待できる」
勇者「乗り気なんだな」
魔王「……いや」
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◆魔王、まさかの宣言を出す
魔王は席を立つと、勇者の肩に手を置いた。
「勇者よ。
本日より、お前を―― 魔国の保護対象 とする」
勇者「は、はぁ!?」
側近「魔王様!? それはつまり――」
魔王「“勇者を勝手に召集・拘束すれば人間国であろうと敵対行為とみなす”ということだ」
勇者「魔王領守備隊に守られるの俺!???」
聖剣『これはもう政治カードというよりペット扱いでは……』
勇者「ペット扱い!?やだよ!?」
魔王「いや、違う。……保護だ。
お前は放っておくと労働しすぎて倒れるであろう?」
勇者「……否定出来ないけどよ」
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◆そのころ、人間国・王城
王は会議室で怒鳴っていた。
「なぜだ! なぜ魔王が勇者を“保護”しているのだ!!
本来我々の管理下にあるはずだろう!!」
文官「しかし……民の間では“勇者様は魔王領で幸せそう” “戦争より温泉” “魔王領はブラック国家よりホワイト”などの評判が……」
王「どこの世界に魔王領がホワイトで我が国がブラックだという風潮があるか!!?」
将校(……いや、あるんですよね最近……)
文官「実際、人間国より労働環境が良いと……」
王「黙れぇぇぇ!!」
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◆魔王領・温泉施設
勇者は湯気に包まれながらぼやいた。
「なんか俺……どんどん“療養が仕事”になってない?」
魔王「お前の仕事はそれだ」
勇者「“戦う勇者”じゃなくて?」
魔王「“休む勇者”だ」
勇者「そんな新職業いやだぁぁぁ!!それ言葉変えただけのニートだろ?!」
聖剣『いやだから向いているぞ』
勇者「向いてるの!?俺!!?」
魔王は静かに告げる。
「……英雄は休むことでしか救われないこともある。
お前はその段階なのだよ」
勇者はぽかんとした後、ゆっくり笑った。
「……なら、まあいっか。
俺、後で皆入り終わったら温泉掃除するね!」
魔王「今働くなと言ったばかりだろう?!!!」
勇者「あっ…いやぁ」
聖剣『休めと言われて仕事を探す勇者、前代未聞』
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別の作品で、異世界スライムおもちゃになる を新連載致しました!前々から構想を練っていたので是非読んでいただけると嬉しいです。




