第98話 勇者よ……黙って座ってろと言っただろう!
魔王城・外交室。
緊張の空気の中、人間国代表団と魔王が向かい合って座る。
魔王は静かに宣言した。
「それでは、これより“勇者の処遇”に関する会談を始めよう」
勇者は、椅子の上で背筋を伸ばし――
口を開きかけた。
魔王「勇者、黙れ。」
勇者「ハイッ!!」
聖剣『……この状況で一番危険なのは魔王でも代表団でもなく“勇者の馬鹿発言”だな』
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◆協議開始
代表団のリーダーが口火を切る。
「まず我が国は、勇者が“魔王側へ寝返った”という疑いを持っております」
勇者(心の声)
(あの時も行ったけど!寝返ってないぞ!? ここで働いてるだけだぞ!?)
魔王は深くため息をつく。
「誤解だ。勇者は“寝返った”のではない。
“戦わせたくない程弱い”だけなのだ」
勇者「ちょっと!!?」
魔王「黙れ」
勇者「ハイィ!!」
代表団「……弱い?」
魔王「そうだ。基礎体力は落ち、筋力は衰え、魔力は暴発寸前。時にはその魔力すら枯渇寸前まで使い切る。 そりゃ戦わせれば三日で倒れる」
勇者「言いすぎじゃね!?!?」
聖剣『いや、お前最近すぐバテるだろ』
代表団はひそひそ声で相談し始めた。
「……確かに、勇者さんはずっと戦場だったはず……」
「過労で洗脳にかかった可能性も……」
「むしろ魔王領で療養してるのでは……?」
勇者(なんか俺、世界的に“虚弱キャラ”にされてない?)
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◆話題は“和平案”へ
代表団「さて、次は“国境付近の安全保障”について――」
勇者がビクッと手を挙げる。
魔王「挙げるな」
勇者「ハイ……!」
代表団「魔王よ、先に確認したい。我々の民が“勝手に温泉に入浴した件”だが――」
魔王「許可はしていない。だが……店の売上は良かった」
勇者「めちゃ儲かった!」
魔王「黙れ」
勇者「ハヒィ!」
代表団「温泉を……新たに建て、共同運営するというのは……?」
魔王「悪くない話だな」
勇者「やろう!!共同経営!!共同風呂!!」
魔王「最後のは違う。それはただの混浴だ」
代表団「…何故混浴?勇者さんの癖?」
勇者「違うわ!……チガウヨネ?(確信が無し)」
聖剣『発言するだけで会議を荒らす男』
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◆会議は終盤へ
話し合いが進むにつれ、代表団の表情は柔らかくなっていった。
「……魔王は意外にも理性的だ」
「勇者(馬鹿)の扱いも上手だし……」
「むしろ我が国の方が勇者を酷使しすぎていたのでは……?」
勇者(……今さら気づいた?)
魔王は静かに立ち上がった。
「では、魔王領としての提案を述べよう。
“勇者を政治カードに使うのをやめ、彼の自由意思を尊重せよ”」
代表団は驚いた。
「……欲しがらないのか? 勇者を」
魔王「必要ない。
私は“働きすぎで倒れる部下を増やしたくない”」
勇者「魔王……!!
なんかちょっと感動した……!」
魔王「黙れ」
勇者「ハイッ!」
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◆会議終了、その帰り道
代表団は馬車に戻りながら言った。
「……勇者様、裏切り者というより……ただの……」
「……魔王と仲のいい、愛すべき馬鹿……?」
「むしろ魔王の方がウチの王様より勇者を守っているように見えた……」
使節団の代表「……私の聴こえない所で話して欲しいな」
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◆魔王城
勇者「なあ魔王、今日俺うまくできてた?」
魔王「……9割黙っていれば完璧だった」
勇者「9割!?」
聖剣『残り1割で全部ぶち壊しかけたがな』
勇者「そんなぁ!!」
魔王はふっと笑う。
「……だが、よく耐えたな。
お前が黙っていたおかげで、戦争は避けられるかもしれん」
勇者「それ平和貢献の方法として正しい!?」
魔王「今回で確信を抱いた。会議の場では勇者、お前は黙る事。それがお前にできる最高の平和活動だ」
勇者「えぇぇぇぇ!!?」
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これでまた平和にもどる、、かな?




