第95話 勇者…神(?)になる
――人間国・王城。
王族、軍上層、文官が一堂に会していた。
「よいか。勇者はもはや国家反逆者である!」
王の怒声が響く。
「しかし陛下!」
軍の将校が立ち上がる。
「偵察隊の報告によれば、元勇様は魔王と戦っておらず、
むしろ共に生活を――」
「だからこそだ!!!」
王が机を叩く。
「“魔王に魂を売った”という証拠だろうが!」
文官が震える声で口を開いた。
「し、しかし民の間では、“勇者は犠牲者だ” “勇者様は和平によって戦を終わらせようとしてくれている!”という声が……」
「愚民どもが何を思おうが関係ない!
我らは“国威”を守らねばならぬ!!」
将校が小声で呟く。
(……国威ねぇ……裏で魔王領の温泉に視察出してんのに……)
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◆そのころ魔王城
勇者はスライム従業員と並んで洗濯物を干していた。
「いやー本当に平和っていいな。
前は一日中、誰かに命令されて戦うか訓練だったからさ……」
魔王が背後から現れる。
「…勇者よ。お前、もう少し“裏切り者”という自覚を持て」
「いやいや、だから裏切ってねぇって!」
勇者は即答した。
「だが人間国から見れば、今のお前は完全に“敵側”だ」
「えぇー!? でも俺、誰も傷つけてないし?!」
聖剣『そういう問題ではないのだが……』
魔王は腕を組む。
「このままでは、また人間国が“討伐軍”を動かす。
お前がどうあれ、“裏切り者”という名目があれば
奴らは民を扇動できる」
勇者は首をかしげる。
「扇動って何?」
「……要は“国民に都合のいい嘘を教える”だ」
「なるほど!!(わかってない)」
聖剣『説明が無駄に……!』
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◆夕刻、人間国の会議室
側近「陛下、緊急報告です!」
王「なんだ今度は!!」
「魔王領から“観光客”が戻ってまいりまして……」
「……か、観光客?」
「はい。勇者と魔王が運営する温泉に、
一般人が“勝手に”入浴していたようで……
“肌が若返った” “美肌効果がある” “超いい湯だった” 等と噂が広がっております」
王「誰が許可を出したああああ!!?」
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◆再び魔王城
勇者「なぁ魔王、なんか最近観光客増えてない?」
魔王「……多分な。
私とお前が“美容の神様”みたいに扱われてるからだ」
勇者「えっ!? 俺すげぇ!?」
魔王「そういう意味ではない!!」
聖剣『裏切り者なのに人気者……歴史書にどう載るのだろうな』
「“温神勇者”とか?」
魔王「タイトルまで考えるな!!!」
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人間の欲(特に美容)は権力者や神にだって止められねぇ!!




