第94話 勇者よ……国際問題を起こすなよ
魔王城の午前。
勇者は魔王に言われた通り、椅子に座って休んでいた。
「……はぁ〜……休むって逆に疲れるんだな……」
スライム従業員がきょろきょろしながら声をかける。
「勇者さん……人間国がまたザワザワしてるみたいですよ……?」
「なんで!? 俺もう関係ないだろ!?」
魔王が窓から外を見て、静かに言った。
「いや……お前は“裏切り者として処刑されかけた勇者”だ。
人間国にとってはまだ“大問題の中心”なのだ」
勇者は顔をしかめる。
「……あれは俺が裏切ったんじゃねぇ。
国が勝手に俺を切り捨てたんだ……」
聖剣が補足するように呟いた。
『勇者よ。あの国の内部でも意見は割れている。
“勇者は裏切り者ではない”と信じる兵士も多いのだ』
「……じゃあ何でまた来るんだ?」
魔王が答える。
「“裏切り者の勇者を魔王が利用している”
――これが、人間国の政治派の公式見解だ。
一方、軍の多くは“勇者は犠牲者では”と疑い始めている」
勇者「ややこしすぎんだろ!!」
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◆城門前 — 人間国“救出部隊(表向き)”
部隊が緊張した顔で並んでいた。
隊長「魔王よ!!
我らは勇者様を“救出”しに来た!!」
魔王が扉の前に立つ。
「救出? 処刑しようとしていた国が?」
兵士たちがざわつく。
兵士A「しょ、処刑……?」
兵士B「本当に……?」
兵士C「王族は“勇者は裏切った”と言っていたが……」
隊長は歯を食いしばりながら叫ぶ。
「処刑は……王族の判断だ!
我々兵は勇者様を裏切り者とは思っていない!!」
魔王は冷静に言う。
「その通りだ。
勇者は裏切っていない。裏切ったのは“お前たちの国”の方だ」
兵士たち「…………!!」
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◆そこに勇者が飛び出す
「魔王ーッ!! 俺も説明する!!」
魔王「おい待てと――」
勇者は階段を駆け下りて叫ぶ。
「俺は裏切ってねぇ!!
殺されそうになったから逃げただけだ!!
ていうか今はめっっちゃ幸せだ!!
温泉ある! 飯うまい! ベッドふかふか! 魔王優しい!!」
隊長「言い方が完全に“拉致後の洗脳”なんだ!!!」
魔王「だから言い方を考えろと言っただろうが!!」
聖剣『勇者よ……語彙が致命的に誤解を生む』
勇者「えぇぇ!?!?」
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◆兵士たちの心が揺れ動く
兵士A「処刑されそうだったのに優しい魔王……?」
兵士B「なんかここの生活、人間国より豊かでは……?」
兵士C「勇者様……ふっくらしてる……」
隊長「全員黙れぇぇぇ!!」
そこへ勇者が真剣な顔で言った。
「俺、人間国で生きた兵器として育てられた。
魔王国に来て初めて、“人として扱われた”んだよ」
沈黙。
魔王が静かに言う。
「勇者は、ここで“普通の生活”を取り戻している。
お前たちの国は、それを奪おうとした」
兵士たちの表情が揺れ動く。
信じたい現実と、国の命令の狭間で苦しんでいた。
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◆しかし勇者の一言が全てを壊す
勇者「とりあえず一旦入浴しね?
あったまると冷静になれるぞ!」
魔王&隊長「余計に誤解を生むわ!!」
聖剣『なぜ“混浴和平”を提案する……』
勇者「だってその方が仲良く――」
魔王「勇者ッ!!
国際問題になるから口を閉じろ!!」
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