第93話 勇者よ……会議中に遊ぶな
魔王城の露天風呂での会議が終わり、
勇者はタオル一枚のまま解放感に浸っていた。
「ふぅ〜……やっぱ露天風呂最高だわ……!」
魔王は濡れた髪を拭きながら、呆れたように横目で見る。
「勇者。会議が終わった途端に気が抜けすぎだぞ」
「いやいや、あれだけ真面目な話したんだから息抜き必要だろ?
俺の前世の国でも“オンオフは大事”って言われてたし!」
「その“オフ”が八割を占めているのが問題なのだがな」
「八割もオフあるわけないだろ!
……七割くらいだって!」
聖剣がすかさず刺すように言う。
『いや十二割だ。』
「存在しない数値出すな!!」
魔王は深いため息をつき、話を戻す。
「さて勇者。そなたには任せるべき新人研修がある」
「……え? 俺が研修する側!?
あの……俺に教えられるものって……ある?」
「当然だ。
“人間視点の接客”は、魔族には逆に教えられぬからな」
「おお……! 俺、役に立てるのか……?!」
勇者の目が輝いた。
魔王は続けて言う。
「ただし――」
「ただし……?」
「会議中に遊んでいたことは減点対象だ」
「ぎゃぁああああああ!!?」
背後でスライム従業員がぴこぴこ震える。
「勇者さん……あの……お風呂で波作って遊んでましたよね……?」
「今言うなぁぁぁぁ!」
魔王がこめかみを押さえた。
「勇者。そなたに言ったはずだ。
“会議中にお湯で流れるプールごっこはやめろ”と」
「いや! 魔王の背中に乗って流れると速いんだって!!」
「怒るぞ?」
「すみませんでしたああああ!!」
聖剣がため息をつく。
『勇者よ……まずは社会常識から学べ?』
「……耳が痛いぃ!!」
魔王は苦笑しつつ、優しく言った。
「まぁよい。
そなたの“人間らしさ”は、この城にとって欠かせぬものだ」
「お、おぉ……俺……役に立てる……!」
『だが…流石に最低限のマナーは守ってくれ。会議では遊ぶな』
「だから痛いって!!」
──こうして勇者は、魔王城初の“人間式研修担当”として
新たな仕事を任されることになったのだった。
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勇者成長してる?




