第90話 勇者……社員旅行を企画する
「聞いてくれみんな! 次の企画は――
社員旅行だぁぁぁ!!!」
会議室が凍った。
「……え?」「いま、なんて?」「旅行……?」
スライムはプルプル震え、妖精は耳を疑い、ミノタウロスは荷物をまとめ始めた。
「社長、それ……どこへ? 何日間? 予算は?」
妖精の問いに、勇者は満面の笑みで答えた。
「どこでも! いつまででも! 予算は――
気持ち(知らん!!!)!!」
「気持ちで旅行行けるかぁぁぁ!!!」
全員が総ツッコミ。
---
魔王が静かに立ち上がった。
「勇者。今の財政状況を言ってみろ」
「えっと……金貨1枚と、勇気と根性が……」
「愚か者!根性を貨幣に換算するな!」
「でもさ魔王、旅行って絆深まるし、会社の士気も上がるし……」
「同時に財政が死ぬ。いや既に死んでいるのか?」
勇者は机に乗り出した。
「じゃあさ! 移動費ゼロ! 宿泊費ゼロ! 食費ゼロ!
全部自作ならOKじゃね!?」
魔王が額を押さえ、深くため息。
「……嫌な予感しかしない」
---
翌日。
勇者が用意した“旅のしおり”が配られた。
《社員旅行 in 魔王領近辺の森》
――手作り温泉を掘ろう!
――野草を食べよう!
――テントは気合で建てよう!
「ただのサバイバルじゃねぇかぁぁぁ!!!」
妖精が悲鳴を上げた。
---
そして当日。
「みんなー! まずは温泉掘るぞ!」
勇者はスコップを持って元気いっぱい。
ミノタウロスが腕を組んで言った。
「社長。温泉って……そんな簡単に出るのか?」
「出る! 漫画だと出る!」
「現実を見ろ」
――ドゴォォォォン!!
突然の爆発。
スライムが叫ぶ。
「温泉じゃなくて“地熱魔獣”が出たぁぁ!!!」
「社長ぉぉぉぉ!!?」
「え、うそでしょ!? 温泉イベントじゃなかったの!?」
地熱魔獣は唸り、辺りが灼熱に包まれる。
勇者が叫ぶ。
「ちょ、待って! 旅行初日からボス戦とか聞いてない!!」
「聞く気もなかっただろ」魔王が冷静にツッコむ。
---
地熱魔獣は暴れながら地面を割り――
ゴボゴボゴボ……!
「……あれ?」
一同が覗き込むと――
天然温泉が湧き出した。
「うおおおお! 本当に出たぁぁぁ!!!」
勇者が興奮し、スライムも嬉しそうに湧きたての湯に飛び込んだ。
妖精がほっと息をつく。
「奇跡って……あるのね」
魔王は静かに言った。
「……勇者。確率的には限りなくゼロに近い」
「いやぁ、俺って持ってる男だわ!」
「持ってるというより、“事故を引き当てる男”だ」
---
勇者、社員旅行を企画。
投稿遅れて申し訳ない…




