第84話 勇者……案件受ける
「勇者さんへ。ぜひ弊社新商品《マナMAXエナジー》の広告塔に!」
「……広告塔? 俺、塔建てるの?」
「違う!」魔王が即ツッコミを入れた。
「それはスポンサー契約だ。企業案件だ」
「企業……案件……!?」
勇者の目が輝いた。
「ついに俺もインフルエンサーかぁぁぁ!」
「いや、ただのバズった居候だ」
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翌日。
魔王の制止も聞かず、勇者は撮影を開始した。
「よぉ! 勇者だ! 今日はこのマナMAXを飲んで――」
ゴクッ。
「――うおおお!? なんだこれ!? 舌が燃える!!!」
「それが“刺激系マナ強化飲料”の売りです!」とスタッフ。
しかも背後では聖剣が小声で解説していた。
「勇者よ、それは……“魔族専用高濃度魔力飲料”だ」
「俺人間だぞ!? 飲んだら死ぬやつだろこれ!!!」
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撮影終了後。
勇者は床に倒れ、泡を吹いていた。
魔王が契約書を覗き込む。
「……勇者、これ見ろ。契約条件に“動画削除不可”って書いてある」
「えっ!? つまり……!?」
「お前の泡吹きシーン、永久保存だ」
「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!」
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その夜。
魔王城の通信機がピコピコ鳴った。
《#勇者チャレンジ》《#マナMAX耐久配信》《#勇者限界突破》
「……またバズっておるな」
「バズるたびに寿命縮むんだが!?」
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魔王がため息をつき、紅茶を置いた。
「勇者。案件とは、信用と責任の取引だ。
報酬は“代償”でもある」
「代償って……このキリキリする胃の痛み?」
「もっと深い意味だが、それでいい」
勇者は天井を見上げながら呟いた。
「俺……次は“安全な案件”受けるわ」
「その言葉、信じていいのか?」
「たぶん」
「たぶんって言うな」
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勇者、初の案件でまさかの泡をふく




