第83話 勇者……バズらせる
「おい勇者、貴様……これはどういうことだ」
魔王が朝から新聞(魔導通信)を叩きつけた。
そこには――
> 【速報】魔王領の酒場に元勇者が出現!
“笑顔で皿を割る天使”として人気急上昇!
勇者の笑顔(半泣き)写真が、ド派手に掲載されていた。
「……あれ、これ昨日のバイトのとき……」
「貴様! 撮られていたのか!」
「いやぁ……ママが“宣伝用”って……」
「宣伝じゃねぇ!これはスクープだ!!」
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魔王城の通信機がピコピコと光る。
《S・N・S》の通知だった。
【#勇者スマイル】【#魔王城勤務希望】【#皿割りチャレンジ】
「チャレンジ化してるぅぅぅぅ!!!」
「お前の失敗がエンタメになっとるぞ」聖剣が呆れる。
「だって俺、笑顔だけはプロ級だから……!」
「その自信、方向間違ってるぞ?!」
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数時間後。
城の外には“勇者スマイル”を一目見ようと群衆が集まっていた。
「ほんものだー!」「皿割ってー!」
「いや、なんのリクエスト!?」
スライムが外壁から顔を出す。
「勇者、ファンクラブできてるよ!」
「いつの間に!?」
「ファンネーム“ヒモズ”だって!」
「語感が最悪ぅぅぅぅ!!!」
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混乱の中、魔王がため息をついた。
「勇者。貴様のせいで城の防衛線がファンで埋まっておる」
「平和の象徴じゃん!」
「治安秩序の崩壊だ」
「でもさ魔王、見てみろよ……」
勇者が窓の外を指差す。
そこには、笑顔で皿を割る子どもたちと、それを笑う親たち。
「……なんか、楽しそうじゃね?」
「……まぁ、確かに。害意のない混乱は、平和の証かもしれんな」
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その夜。
勇者は布団に入りながらスマホモドキ(魔導端末)を見つめていた。
「……あ、またフォロワー増えてる」
「勇者よ。次は何をする気だ?」
「料理動画でも撮ろうかな!」
「勇者の料理……バズる前にBANされるわ」
勇者、まさかのSNSスターに。




