第81話 勇者……税務署に行く
「勇者インダストリー代表勇者様ですね?」
「……はい」
勇者はカチカチに緊張しながら椅子に座っていた。
目の前に座るのは、黒いスーツに赤い角を生やした“魔国税務局職員”。
「こちら、申告書類に不備がありまして」
「ひ、ひびっ!? 何が!?」
「“支出:スライムのゼリー100個(癒し)”が経費として計上されていますが……これは?」
「あっ、それは社員の心を潤す福利厚生的な……!」
「癒しは非課税ではありません」
「ひぃぃ!!!」
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魔王が横から小声で囁く。
「だから言っただろう。帳簿は我が見ろと」
「だって! 経営者として責任を――」
「お前の責任感、方向逆なんだよ」
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税務官がさらにページをめくる。
「“支出:友情”“支出:感謝”“支出:愛”……」
「だって気持ちも経営に大事だし!」
「課税対象外です。しかもこれ、通貨単位が“♥”って書いてありますね」
「うわぁぁぁバレたぁぁぁ!!」
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「次に、“妖精用サプリメント・高級版(1瓶30金貨)”」
「あれは仕事効率化のためで!」
「“効率化”って欄に“テンションアップ”って書いてあるぞ」
「ぐっ……!」
魔王は頭を抱えた。
「勇者。もはやお前の経営は“慈善事業”だ」
「だってみんな頑張ってるし!」
「……」
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税務官が眼鏡を押し上げる。
「勇者インダストリー様、最終確認ですが――」
「ひっ」
「今期の納税額は、“金貨一万二千五百三十四枚”です」
「ひぃぃぃ!?!?!?!?」
勇者の魂が音を立てて抜けた。
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「……ま、魔王。なぁ、助けて……?」
「嫌だ」
「冷たい!!」
「お前の甘さが生んだ現実だ。甘味課税だな」
「そんな課税制度やめてぇぇぇぇぇ!!!」
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結局、勇者は“魔王ローン”で納税を済ませた。
金貨の山を前に、魔王は苦笑した。
「……まぁ……お前の経営は、結果は出せないが、何故か妙に憎めん」
「そういうの、愛で課税される?」
「黙れ」
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勇者、ついに税務署へ!




