第8話:勇者よ……カレンダー勝手に書き込むなよ
魔王の月間カレンダーに、勝手に『討伐予定』を書き込む勇者。
生活感あふれる魔王と自由すぎる勇者の、予定表をめぐる攻防戦。
果たしてFAXによる申請制度は機能するのか?
魔王城の執務室。
壁には大きな月間カレンダーが掛かっていて、予定が色とりどりのマーカーでびっしりと書かれている。
「……ふっふっふ。よし、ここだな」
勇者はこっそりとカレンダーに近づき、空いている日付に堂々と書き込んだ。
『勇者による魔王討伐!』
「これで忘れないだろ。よし、あとは――」
「――おい。何をしている」
背後から低い声。
勇者はビクッとして振り返ると、魔王が腕を組んで立っていた。
「い、いや……次の討伐日を決めただけだよ」
「誰の許可を得て書き込んだ」
「え、予定って共有するもんじゃないの?」
「これは我輩のスケジュール帳だ!!」
魔王は指差した。
その日付の下には、もともと『床下倉庫整理』と書いてあった。
「お前の予定で潰すな! 倉庫整理だって重要な仕事だ!」
「でも戦いも大事じゃん」
「戦いより掃除が大事な日もある!」
勇者は首をかしげた。
「じゃあ、倉庫整理と討伐、同じ日にやればいいじゃん」
「そういう問題じゃない! 午前中に命のやり取りして、午後に荷物の仕分けなんかできるか!」
勇者は少し考えてから、さらに別の日に『予備討伐日』と書き加えた。
「……予備って何だ」
「天気悪かったら順延しようと思って」
「運動会か!? 討伐は延期しねぇよ!!」
魔王はため息をつき、カレンダーから勇者の落書きを消しながらぼやいた。
「……次からはちゃんと申請書を出せ。FAXでな」
「うっ、またFAX……」
「いいか、勇者。“予定は共有”じゃない、“予定は相談”だ」
「はいはい、わかりましたよ――じゃ、来月の予定は……」
「もう書くなああああ!!」
読んでくれてありがとう。
カレンダーは魔王の命綱。勝手に書き込むのは命知らずの行為。
次回は、魔王の食卓を襲撃する「勇者よ……晩ごはん時に来るなよ」を予定。




