第79話 勇者よ……ボーナスを配るなよ
「諸君! 本日は半年に一度の――ボーナス支給日だぁぁ!」
勇者が叫ぶと同時に、会議室がざわめきで満たされた。
「ついに来たか!」「報酬!」「現金!」「うおおおお!!」
妖精もスライムもミノタウロスもテンションMAX。
「静まれぇぇ!」
勇者は机を叩く。
「えー、今回は業績に応じて支給額を決めます!」
「業績って……そもそも何基準?」妖精が手を挙げる。
「うちの会社、売上ゼロだけどな」魔王が淡々と補足した。
「……え、じゃあどうすんの?」
「“雰囲気”で配る!」
「最悪の経営判断だな!!!」
---
勇者はまずスライムを指名した。
「スライムは掃除担当としてがんばった! …ただし、床を三回溶かした!」
「うっ……!」
「よって――金貨3枚!」
「少なぁぁぁい!!!」
次に妖精。
「お前は仕事できるけど言葉が鋭利過ぎる!」
「愛のムチよ」
「金貨2枚!」
「は?!さっきよりも減ってるじゃん!?」
ミノタウロスが胸を張る。
「オレは筋トレで士気を上げた」
「仕事中にやってたけどな」
「筋肉も業務の一部だ」
「……金貨1枚」
「何故減ってるぅぅぅ!!?」
---
元盗賊のバルドがにやりと笑った。
「俺は一番働いたぞ。警備も買い出しも全部やった」
「それは確かに」
「あと勇者の財布からお金を――」
「……??!。没収だぁぁぁ!!!」
---
混乱の支給会を見かねて、魔王がゆっくりと立ち上がる。
「勇者。ボーナスとはな、働く者への感謝の形だ。
数字ではなく、“努力の証”として贈るものだ」
「……なるほど。つまり!」
「また誤解した顔をするな」
勇者はにやりと笑って、みんなに言った。
「じゃあ今回は、“感謝の気持ち”を金貨に換算して配る!」
「結果的に一緒じゃねぇか!」全員の総ツッコミが飛ぶ。
---
最終的に――
全員に金貨3枚と手書きの感謝状が配られた。
紙にはこう書かれていた。
> “ありがとう。君がいて、会社が笑える。”
「……勇者、お前、やっぱり変な上司だけど」
妖精がぽつりと呟く。
「悪くない会社ね」
スライムが嬉しそうにぷるぷる震えた。
魔王も苦笑しながらつぶやく。
「ふむ……こうして成り立つのが“魔王領最底辺の奇跡企業”か」
---
勇者、初のボーナス支給成功(?)




