第75話 勇者よ……教育係を任せるな
「というわけで! 新人教育マニュアルを作るぞ!」
勇者が白板に“教育係:勇者”と書き殴る。
魔王は呆れ顔で紅茶を飲みながら言った。
「……まず新人がいないだろう」
「準備が大事なんだよ! 備えあれば憂いなしってな!」
「お前の場合、憂いしかないのだが」
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勇者は張り切って紙を広げる。
「第1章:会社とは何か!」
「第2章:モップの正しい構え方!」
「第3章:魔王に逆らうときの逃げ方!」
「……最後は何だ」
老竜が湯をすすりながら言った。
「勇者よ、教育とは言葉ではなく“背中”で教えるものじゃ」
「じゃあ俺、背中で語るわ!」
「寝転ぶな」
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勇者は本気で“新人教育ロールプレイ”を始めた。
「よーし、新人くん! 今日からよろしくな!」
そして自分で声を変える。
「よ、よろしくお願いします!」
「まずは会社の理念を言ってみろ!」
「血と涙で磨き上げる、君の明日!」
「よく言えたな俺ぇぇぇぇ!!!」
聖剣が壁から冷たく呟く。
「勇者よ……一人芝居教育ほど虚しいものはない」
「うるさい! 練習は大事なんだ!」
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魔王が机に肘をついて言った。
「お前……もしかしてこれ、本当に楽しんでるな?」
「楽しいけど!?」
「教育係に向いてないタイプの典型だ」
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その夜。
勇者は完成したマニュアルを魔王に見せた。
タイトルは――
> 『新人のための生存ガイドブック vol.1』
副題にはこう書かれていた。
“魔王に怒られた時の対応マニュアル付き”
魔王はページをめくり、苦笑した。
「……意外と実用的だな」
「マジで!?」
「“怒られたら一度土下座し、3秒後に逃げろ”とか書いてある」
「現場の知恵です!」
「知恵じゃなくて経験だろ」
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勇者、教育係として覚醒(方向性は間違っている)




