第72話 勇者よ……働き方を見直せよ
「……お前、まだ生きてるか?」
勇者は机に突っ伏したまま、かすかに手を上げた。
「……生きてる。心が死んでるだけ……」
「ならよい」
魔王が静かに紅茶を置いた。
「勇者。働き方を変える時が来た」
「はたらきかた……かいかく……?」
「そうだ。魔族式“働き方改革”だ」
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聖剣が興味深そうに首をかしげる。
「ほう、魔族にもそんな制度が?」
「当然だ。魔界では“魂の燃費”を重視する。
燃やしすぎれば灰になるだけだからな」
「なにその名言みたいな説明……!」
「つまり、“働きすぎる前に遊べ”ということだ」
「急に文化が軽っ!」
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老竜が湯飲みを置いて笑う。
「ワシらは働く前に誓約をし、週に一度“強制休養日”を設けておる。
その日は一切仕事をしてはならんのじゃ」
「え、それ守らなかったら?」
「魂が凍る」
「法律より重ぇぇぇぇ!!!」
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魔王は机に手を置き、真剣な表情で続けた。
「勇者。働きとは“生きるための手段”であって、“生きる目的”ではない」
「……でも俺、戦うか引きこもることしか知らなかったから」
「ならば学べ。“休む”という勇気を」
勇者は目を丸くした。
「……休む勇気、か」
聖剣が静かに言う。
「勇者よ、剣を抜くだけが戦いではない。
時に、鞘に収めることも勇気だ」
少しの沈黙。
勇者はゆっくり頷いた。
「……わかった。明日は仕事休む!」
「よし」
「明後日も休む!」
「……調子に乗るな」
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その日の午後、勇者は魔王城のバルコニーで風を浴びていた。
「うわぁ……久々に空見た気がする」
遠くで鳴く魔鳥の声。
静かな風。
そして、どこか懐かしい感覚。
「……休むって、いい事なんだな」
魔王が隣で微笑んだ。
「そうだ。生きることも、立派な仕事だ」
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勇者、ついに“休む勇気”を覚える!!
だが油断したのも束の間――




