第71話 勇者よ……仕事を抱えすぎるなよ
「勇者、貴様の机の上は何だ」
魔王の声が低く響く。
机の上には、依頼書、見積書、請求書、納期表――そして半分食べかけのパン。
「えーと……進行中の案件……っす!」
「進行中ではなく、埋葬中だな」
聖剣がため息をつく。
「勇者よ、これは“タスク管理”の敗北だ」
「だって、片付けるより早く新しい仕事くるんだもん!」
「それを“抱えすぎ”という」
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魔王はホワイトボードを取り出した。
「見ろ。これが“プロジェクト管理表”だ」
「うわ……なんか線と矢印いっぱい……」
「“ガントチャート”という。仕事を可視化するのだ」
「か、可視化って魔法?」
「違う。管理だ」
勇者はチョークを握り、恐る恐る書き始める。
「1日目:墓地掃除、2日目:貴族邸……3日目:地獄門前清掃……」
「いやそれ、命の保証がないやつだ」
「うるさい! これ終わったら勇者ポイント貯まるし!」
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そこへ老竜がのんびり顔を出す。
「勇者よ、“やることリスト”を作っても、休む時間を入れねばならんぞ」
「え、休む時間ってタスクに含まれるの!?」
「当然だ。働き詰めでは心が摩耗する」
魔王が頷く。
「余白こそ、最も重要な“生産性の魔法”だ」
「余白……魔法……」
勇者はメモを取る。
「“休む=仕事”って書いとこ!」
「本質を捉えたな」
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だが次の瞬間、聖剣が冷たく告げる。
「勇者、そろそろ現実を見ろ。納期は明日だ」
「えっ!? どの仕事!?」
「全部だ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
魔王が静かに目を閉じた。
「勇者。これが“リソース管理の失敗”だ」
「……俺、もう経営とか無理かもしんない」
「安心しろ。人は失敗からしか学べん」
「ポジティブなのか絶望的なのかわかんねぇ!!!」
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その夜、勇者は机に突っ伏したまま眠った。
壁のスピーカーがピッと光り、静かに音楽が流れる。
――♬やすめ、働きすぎた勇者よ――
魔王が小さく笑う。
「ふん……また一つ、社会を学んだな」
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勇者、タスク地獄で限界突破!




