第68話 勇者よ……ブランディングに走るなよ
「なぁ魔王……ロゴ、変えたいんだけど」
「また始まったか」
魔王は書類から目を離さずに答えた。
「だって、真っ赤ってなんか怖いじゃん。
“掃除で世界を救う”会社なのに、血の色だぞ!?」
「お前のスポンサーが“血の伯爵”なんだから当然だ」
「企業イメージって大事だろ!?」
「契約書に“ロゴ改変禁止”って書いてあったぞ」
「読んでねぇぇぇ!!!」
「読んでないのが悪い」
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その時、聖剣が壁際から口を挟む。
「勇者よ、ブランディングとは、企業の“顔”だ。
軽々しく変えるものではない」
「でもさ、怖いより可愛い方が売れると思うんだ!」
「……ほう、可愛い路線か」
魔王が不穏に笑う。
「ならば“血の雫に笑顔を描いたロゴ”にしたらどうだ?」
「は?!それホラーじゃねぇかぁぁぁ!!!」
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老竜も参加してきた。
「ワシは“燃えるドラゴンのシルエット”が良いと思うのう!」
「掃除会社のロゴだぞ!? なんで燃やす!?」
議論は収拾がつかず、魔王が手を叩いた。
「よし、ブランディング会議を正式に開こう」
黒板には大きく書かれる。
> テーマ:我が社の“清潔感と地獄感”の両立について
「どっちかにしろよぉぉぉ!!」
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勇者は必死に訴えた。
「ロゴは“信頼と親しみ”を与えるものがいいんだよ!
たとえば前世の日本企業みたいに!」
「ほう、日本式デザインとは?」
「“シンプルで、余白を生かした、ちょっと丸いフォント!”」
「なるほど。では“血文字を丸くして余白に黒炎を添える”」
「ふっざけんなよ!だからそれホラーブランド確定だろぉぉぉ!!」
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議論の末、最終的に採用されたのは――。
> “真紅のハート型モップ”を掲げた勇者のシルエット
「おお……悪くない」魔王が頷く。
「おぉ、やっとまともな感じに……」
しかしその下に小さく書かれたスローガンが目に入る。
> 『血と涙で磨き上げる、君の明日。』
「重ぇぇぇぇぇぇ!!!!」
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勇者、ブランディング戦争に敗北。
結局“血の伯爵”の意向が全て通ったが、
なぜか評判は上々――地獄の人気企業へ!




