第67話 勇者よ……契約書をよく読むのだ
血の伯爵から出資を受けた勇者。
しかし、その契約書には――“赤字より赤い文字”で書かれた、恐怖の条件があった。
「勇者、これが契約書だ」
魔王が机に置いたのは、分厚い黒革の書類だった。
「うわ、見た目からして悪魔の書!」
「いや実際、書いたのは悪魔だ」
勇者はおそるおそるページを開く。
「えっと……“出資金1万ルーン、返済条件――血判押印必須”? 血判!? インクでいいだろ!」
「インクでは信用にならん」
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勇者は赤ペンを取り出して勢いよく署名した。
「はい、勇者の“血色ペン”サイン完了!」
「……お前、契約の怖さをわかっていないな」
「え? だって日本でもよく契約書サインしてたし!」
「それは電子署名だろ。ここは魔界だ」
「ぐっ……アナログ文化怖ぇ……!」
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魔王は契約書をめくりながら呟いた。
「ふむ。“違約時の罰則”の項目が多いな」
「どんな?」
「えーと、『支払い遅延の場合、魂徴収または勤務年数十倍延長』」
「地獄の残業!?!?!?」
「しかもこの世界にはお前の言う“労基”が存在しない」
「ブラック企業の極致かぁぁぁ!」
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聖剣がため息をつく。
「勇者、契約とは“信頼の形”でもある。
だからこそ――内容を理解せねばならん」
「うっ……心が痛い……」
「お前、前世でも契約書を読まずにアプリ登録してただろう」
「や、やめろぉぉ! “利用規約を読まない族”の過去を暴くな!」
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そのとき、契約書がぼんやりと光り始めた。
「な、なんか光ってるんだけど!?」
「血の伯爵の魔術契約だ。正式に発効したようだな」
「発効っていうか発狂だよこれ!!!」
書類の文字が浮かび上がり、宙に刻まれる。
> 『勇者インダストリーは、今後あらゆる戦闘・労働において
血の伯爵の“ブランディング協賛”を受けるものとする』
「ブランディング協賛ってなに!?」
「お前の会社ロゴが、今後すべて血の赤に統一されるらしい」
「ホラー企業になっちゃったぁぁぁ!!」
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「勇者、これが資本主義の恐ろしさだ」
「怖い! 戦うより怖い!!!」
勇者は頭を抱えながら叫んだ。
「次からはちゃんと契約書読む!!!」
「馬鹿が。もう遅い」
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勇者、契約社会の闇に触れる。
利用規約を読まない族……どなたか身に覚えがあるのでは?




