第66話 勇者よ……投資家を呼ぶのだ
「魔王、俺、資金調達する!」
「……嫌な予感しかしないのだが」
魔王の机には、勇者の描いた怪しげなフライヤーが並んでいた。
> 『勇者インダストリー説明会開催!
投資すれば世界を救える! たぶん!』
「“たぶん”って書くな」魔王が冷ややかに指摘する。
「だって確信はないし」
「そういう場合は正直さが一番危険なんだよ」
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翌日。魔王城・大会議室。
そこにはなぜか魔族界の錚々たる顔ぶれが集まっていた。
「第1投資家、“血の伯爵バルガス”。出資条件は“魂”だ」
「えっ!? 金じゃなくて!?」
「第2投資家、“冥府の大臣ヴェリド”。出資条件は“寿命三年”」
「ちょ、待っ――それもおかしいだろ!!」
魔王は冷静にメモを取りながら言った。
「まぁ、この世界では“信用”とは即ち“命”だからな」
「そんなブラックな市場イヤだぁぁ!」
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勇者は必死にスライドをめくりながらプレゼンを始めた。
「えー、弊社のビジョンは“笑顔と掃除で世界を救う”です!」
「掃除か。利益率は?」
「に、20%くらい! たぶん!」
「“たぶん”が多いな」
次に聖剣がフォローする。
「弊社は労働力として高い柔軟性を持ち、
また勇者本人の“社畜スキル”も高いです」
「おいこら何言ってんだ」
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バルガス伯爵が顎に手を当てて言った。
「面白い。だが、君はなぜ社長になった?」
「面接落ちたからです!」
「即答!?」
会場がざわめく。
魔王は頭を抱えた。
「勇者……言葉の選び方というものがあるだろう……」
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プレゼンの最後、勇者は胸を張って言った。
「僕はこの会社を通して、世界を明るくしたいんです!
みんなが笑って働ける、そんな社会を!」
その瞬間、静寂が訪れた。
そして――。
「……気に入った」バルガス伯爵が立ち上がった。
「貴様の熱意に、1万ルーン出資しよう」
「マ、マジですか!?」
「ただし条件がある」
伯爵の笑みが不穏に光る。
「会社名を“ブラッディ・インダストリー”に改名せよ」
「えっ!? 血の匂いしかしない!!」
勇者が叫ぶ中、魔王は静かに頷いた。
「悪くない取引だ」
「いや良くねぇぇぇ!!」
勇者、まさかの“血の伯爵”から出資を受ける。
だが次回、契約書に隠された“恐怖の条項”が明らかに――!?
異世界の投資契約は命がけのようだな!




