第65話 勇者よ……経営を学ぶのだ
会社を潰した勇者。
しかし、立ち直りは早かった――いや、早すぎた。
彼はいま、魔王直伝の“異世界MBA講義”を受けている。
魔王城・会議室。
机の上には黒板、羽根ペン、そしてなぜか“スーツ姿”の魔王。
「では始めよう。勇者、貴様に“経営”というものを叩き込む」
「ひ、ひえっ……! なんか今日の魔王、圧が違う……!」
「当然だ。これより“魔王式 経営論 初級編”を開始する」
聖剣がぼそっと言う。
「講師が魔王で、受講生が勇者……どこかの地獄講義だな」
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「まずは“利益”の定義からだ」
魔王が黒板にチョークを走らせる。
> 利益 = 売上 − 費用
「……つまり、稼いだ金から支出を引いた残りが利益だ」
「へぇ……じゃあ俺の今月の利益はマイナスか!」
「そうだ。お前の存在自体が赤字だ」
「おい!」
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「次に、“固定費”というものがある」
「それはなんだ?」
「家賃、光熱費、通信費――お前の寝るスペースの家賃もだ」
「え、俺って家賃取られてんの!?」
「当たり前だろう?滞納三ヶ月分だ」
「うぎゃあああああ!!」
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「よいか、勇者。経営とは、“感情ではなく数字”だ」
「数字か……つまり、敵のHPバーみたいなもんだな!」
「まぁ、概ね合ってる」
魔王は真剣な表情で続けた。
「だがな、経営で一番大切なのは“マーケティング”だ」
「まーけ……なに?」
「市場を知り、顧客を知ることだ」
「つまり敵情視察か!」
「それを戦争にたとえるな」
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魔王は勇者の顔をじっと見つめた。
「勇者、お前の会社――《勇者インダストリー》の強みは何だ?」
「えっ、えーと……情熱?」
「弱い」
「やる気!」
「さらに弱い」
「笑顔!!」
「もはや意味がない」
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「ビジネスには“USP”が必要だ」
「うすぴー?」
「Unique Selling Proposition――“独自の売り”だ」
「独自の……売り……」
勇者は少し考え、顔を輝かせた。
「俺、勇者だし、“勇気を売る”とかどう!?」
「……詐欺の香りがするな」
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「それから、“キャッシュフロー”も理解しろ」
「また新しい敵か!?」
「敵ではない。お金の流れだ」
「……あ、俺の財布の中、常に逆流してる」
「知っている」
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「だが勇者、一番重要なのは――“信用”だ」
魔王の声が低くなる。
「信用を失えば、どんな企業も終わりだ。
それは、世界を救う力よりも価値がある」
「……信用、か」
勇者は少しだけ真剣な顔になった。
「俺、前の世界じゃブラックリストだったけど、ここでは頑張るよ!」
「いきなり不安なカミングアウトやめろ」
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講義が終わる頃、勇者の頭からは煙が出ていた。
「……お前、顔が真っ白だぞ」
「俺……戦うより疲れた……」
「それが“経営”という戦場だ」
そして魔王は微笑んだ。
「だが、学んだことを活かせば、次は潰れん」
「マジか!? じゃあ次こそ黒字だ!」
「馬鹿者。フラグを立てるな」
赤字の勇者が黒字を夢見る日は来るのか?
急な休載申し訳ございません!リアルが忙しすぎてなかなかアップロード出来ませんでした。
お詫びに3話分を本日お出しします。




