第64話 勇者……経営相談を受ける
「魔王、俺、相談したいことがあるんだ」
「ほう。珍しく真面目だな」
「会社を立て直すにはどうしたらいい?」
魔王は紅茶をすすりながら静かに言った。
「まず、お前が経営者をやめることだ」
「そこからかよ!?」
「勇者インダストリーは三日で破産、借金七万ルーン。
しかも経費の内訳に“爆発物実験費”ってなんだ」
「あ、あれは……失敗でした!」
「知っている」
聖剣が壁際で補足する。
「勇者よ、そもそも“経営”とは、考えて動くものだ。
お前のように“ノリで動く”ものではない」
「うぐ……耳が痛い……」
勇者は拳を握った。
「でも俺、またみんなで働きたいんだ! 老竜も、魔族の子も、楽しそうだったし!」
「……ふむ」魔王の目が細くなる。
「本気か?」
「もちろん!」
「では、まず“経営の基本”を叩き込んでやろう」
魔王が立ち上がり、黒板を取り出した。
「経営とは、“目的・計画・利益”の三本柱で成り立つ」
「へぇ〜……“爆発”とか“情熱”じゃないんだ」
「違う」
魔王はチョークを走らせる。
「まず“目的”だ。何を成したいか明確にせよ」
「うーん……世界を救う?」
「却下。お前の会社は掃除屋だろう」
「……掃除で世界を救う!」
「馬鹿者。現実的な目標にするんだ」
次に“計画”。
「売上目標、予算、進捗管理、納期――これらを数値で示す」
「……RPGで言うと?」
「ステータス管理だ」
「おおっ! 得意分野だ!」
「では“利益”とは?」
「敵を倒すと出る金!」
「……それは略奪だ」
魔王が深くため息をつく。
「勇者。お前に経営はまだ早い」
「でもさ……俺、本気で学びたいんだ」
その目に嘘はなかった。
魔王は少し考え、静かに言った。
「よかろう。では私が“経営顧問”として指導してやる」
「ま、マジで!?」
「その代わり――一つでも赤字を出したら、貴様は炊事担当だ」
「え!? 急に現実的なペナルティ!?」
聖剣がくすりと笑う。
「勇者よ……炊事のほうがまだマシではないか?」
「お前も混ざるなぁぁ!!」
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勇者、まさかの“魔王塾”へ入門したようだ。
次回――「勇者……会社説明会を……」。




