第61話 勇者……アルバイトをする
そして勇者の初勤務。
「いらっしゃいませぇぇ!!」
声がデカすぎて、客がビクッとした。
「お、お静かに……ここは喫茶店だぞ」同僚の魔族少女が小声で注意する。
「す、すみません!」
勇者は深呼吸し、カップを慎重に運ぶ。
「コーヒー、熱いのでお気をつけくださ――」
ズルッ。
コーヒー、宙を舞う。
客「ぎゃあああああ!!」
「すみませぇぇぇん!!!」
店内は大混乱。
厨房から聖剣の声が聞こえる。
「勇者よ……なぜ毎回、液体を敵に回すのだ」
勇者は焦ってモップを手に取り、床を拭こうとした。
だが、慌てて魔族少女の尻尾を巻き込んでしまう。
「ひゃあっ!? ちょ、ちょっと!」
「ご、ごめん! 狙ったわけじゃない!!」
客席からざわめき。
「勇者……痴漢か?」
「ちがーーう!!」
十分後、勇者は制服のまま店の外に立たされていた。
魔王が通りがかり、静かに尋ねる。
「……何をした」
「接客の勉強を……」
「どこを学んだ結果だ」
「全部失敗した……」
魔王は深いため息をついた。
「勇者よ。働く前に――まず“落ち着く”という技を覚えろ」
「……それってスキル扱いなの?」
「もはや魔法の域だ」
勇者は地面に正座して呟く。
「はぁ……俺、またクビだな……」
すると聖剣が優しく言った。
「だが勇者。少なくとも、誰かの役に立ちたいと思ったのは悪くない」
「……そ、そうかな」
「ただし次は、火と液体の扱いを禁止だ」
「厳しすぎない!?」
勇者、アルバイト初日でクビ確定。
“働きたい”という気持ちは立派、でも結果はいつも爆発的。
次回――「勇者よ……面接を受けろ」。
就職活動編、まさかの始動!?




