第55話 勇者よ……魔王城を掃除しろよ
魔王城の廊下に、バサッバサッと雑巾の音が響く。
勇者はしゃがみ込み、床を拭きながらぼやいた。
「……俺、昨日“幸せになれ”って言われたよな?
これ、幸せ……なのか?」
後ろから魔王が冷ややかに言う。
「居候(ニート&ヒモ)である以上、掃除くらいはして当然だ」
「うっ……居候って言葉にカッコつけ足さなくてもいいだろ!」
勇者は雑巾を一気に滑らせ――。
「うわっ! 止まらねぇ!」
廊下を滑って柱に激突した。
「……勇者。何をしている」
「掃除に命懸けなのか?!」
その様子を見ていた老竜が笑い声を上げた。
「フハハ! まるで子供の運動会だな!」
すると、壁のスピーカーがピッと光り、タイミングよく運動会BGMが流れ出す。
「うわぁぁ! やめろ! 掃除にテーマソングいらねぇ!待ってましたとばかりに流れて来んな!!!」
「勇者よ、むしろテンションが上がるではないか」聖剣が冷静に返す。
「俺は掃除をしてるんだ! 徒競走してるんじゃねぇぇぇ!」
床を雑巾がけで全力疾走する勇者。
魔王は腕を組み、呆れながらも微かに笑みを浮かべた。
「……まぁ、ある意味ではこれも人としての成長かもしれんな」
勇者、魔王城の掃除で大暴走!
雑巾がけすらも戦場に変える、その不器用さは健在みたいだ。
次回――「勇者よ……買い物を一人でこなせよ」。
今度こそ役に立てるのか!?(無理やろなぁ)




