第46話 勇者よ……クビになったのか?
魔王城のリビング。
ソファにどっかり座った魔王が、腕を組んで勇者を睨んでいた。
「勇者よ。……聞くが」
「は、はい!」勇者は背筋を伸ばす。
「――クビになったのか?」
「…………」
勇者は視線を泳がせる。
「……い、いや、その……クビっていうか……うん……強制送還?」
「...結局クビだろうが!」魔王が机を叩く。
聖剣がぼそりと呟いた。
「パン屋で“試し斬り”をしたと聞いたが」
「だって! “切れ味抜群のパン包丁”って宣伝文句があったんだぞ!? 俺が確かめてやらなきゃ誰がやるんだよ!」
「客が切って確かめるんだよ!」
魔王は深くため息をついた。
「……勇者。戦場ならまだしも、日常で剣を抜くな」
「うぅ……俺にはまだ早かったのか……アルバイト……」
その時、玄関の方から声がした。
「魔王様ぁぁぁ!」パン屋の店主が乗り込んできた。
「今日の件は大変でしたが……魔王様の居候が働きに来てくれたと町では噂になってまして! 実は――宣伝効果抜群で!」
「……は?」勇者と魔王は同時に固まった。
「ですから! クビにはせず、むしろまた来ていただきたいくらいで!」
「えぇぇぇ!? 俺、リベンジ確定!?」勇者が叫ぶ。
魔王はこめかみを押さえながら呟いた。
「……お前、日常に混乱を撒き散らしているだけなのではないか?」
聖剣は冷静に結論を出した。
「(……コイツ、結局次もやらかすんだろうな)」
勇者、クビかと思いきやまさかの人気者になる。
しかしそれは“良い意味”かどうかは別問題なのだ。
次回――「勇者よ……根を詰めすぎるなよ」。
勇者、連勤を経験する
パン屋「...この商店街が昔以上に賑わってて嬉しいねぇ」




