第44話 勇者よ……貯金を覚えよう
家計簿に苦戦した勇者。
だが次なる試練はもっとシビア――“貯金”。
果たして元異世界生まれ現世育ちの勇者に金銭感覚は芽生えるのか。
魔王城の居間。
机の上には革の財布と、少しばかりの硬貨。
「よし勇者。今月のお前の小遣いだ」魔王が財布を突き出した。
「やったー! 臨時収入ゲット!」勇者は飛び跳ねる。
だが次の瞬間、魔王が低い声で続けた。
「ただし条件がある。――必ず半分は貯金に回せ」
「えぇぇ!? 使わせろよ!」
「貯められぬ者に未来はない」
聖剣が横から口を挟む。
「勇者よ、剣の刃こぼれを直すにも資金は必要だぞ」
「ぐぬぬ……そんな理屈で攻められると弱い……」
勇者は財布を手に城下町へ。
最初は決意を固めていた。
「よし、今日は散財しない! 半分はちゃんと残す!」
――が、パン屋の前で足が止まる。
「新作のチョココロネ、魔王様にお届け用!」と看板に書かれている。
「うわぁ……これ絶対喜ぶやつ……買うか……いやでも……」
次は雑貨屋。
「限定! なんか使うと剣が強くなる不思議な専用オイル!」の文字。
「ちょ、ちょっと試すだけ……」
結局、財布はほぼ空に。
魔王城に戻った勇者は、震える手で財布を差し出した。
「ご、ご覧ください魔王様! ちゃ、ちゃんと……一枚だけ残しました!」
「……一枚だけ?」
魔王は深いため息をついた。
「勇者よ、それでは“貯金”ではなく“端数”だ」
勇者は床に崩れ落ちた。
「うぅ……金銭感覚って、戦場より過酷だぁぁ!転生前にL○NEマンガとかピ○コマとかに散財しまくってたのを思い出す...。」
聖剣がぼそりと呟く。
「……コイツ、来月もやらかすな」
勇者、貯金に惨敗。
“守るべき日常”の道は、財布の中身から始まる。
次回――「勇者よ……アルバイトするなよ」。
居候勇者、ついに働く!?
...勇者君きちんと働けるかなぁ?




