表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『勇者よ、常識を見ろ』シリーズ  作者: 深森あい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/106

第38話 勇者よ……肩書きを増やすなよ

観念して“居候”を受け入れた勇者。

しかし城下と城内では、彼の肩書きが勝手に増殖していく――。

 魔王城の居間。

 勇者はソファに沈み、天井を見つめながらぼやいた。


「さ……最近さ。俺の肩書き、“勇者”より“居候”って言われる方が多くない?」

「事実だ」魔王は読んでいた書類をぱたんと閉じる。

「否定してよ!」


 壁際の聖剣が、ためらいなく追い打ちをかけた。

「勇者兼、居候(ニート&ヒモ)、掃除係、料理失敗常習犯、プリン……」

「最後は言うなーー!! てか括弧書きやめろ! 傷つくから!」


 勇者が枕を抱えて転げ回っていると、門番が慌てて駆け込んできた。

「陛下! 城下の掲示板に新しい通達が!」

「内容は?」

「“勇者殿の通り名:魔王の同居人。職能:居候(ニート&ヒモ)”……と」


「職能て何!?」勇者が跳ね起きる。

「職務経歴に記載できるのでは?」と聖剣。

「できるかぁぁ!」


 魔王は額に手をあて、重々しく言った。

「勇者。肩書きは外から勝手に貼られるものだ。だが――内側で決める“役割”は、自分で選べる」

「役割……?」


 魔王は一枚のメモを差し出す。

「当面の“役割”として、三つ用意した。

 一、留守番。

 二、来客の湯茶出し。

 三、買い物リストの読み上げ係(勝手に追加するな、の意)」


「三つ目が一番難しい気がする……!」

「読み上げるだけだ」

「俺の自制心が試されるやつじゃん!」


 苦い顔をしつつも、勇者は紙を受け取り、ふと表情を緩めた。

「……でも、“役割”って言われると、ちょっと頑張ろうって気になるな」

「当然だ。お前は“勇者兼”だが、我が城では“仲間兼”でもある」


 そのとき、廊下から小さな声。

「ごめんくださーい、回覧板です」

 近所の老竜が顔を出した。


「お、おう! い、いらっしゃいませ!」

 勇者は慌てて立ち上がり、湯を沸かし、茶器を並べ、メモを見ながら深呼吸。

「えっと……本日の茶菓子は“余計な物を出すな”……じゃなくて、干し果実です!」

「言い直したな」魔王が小さく笑う。


 老竜が湯呑みを受け取り、目を細めた。

「お、今日はちゃんと挨拶できたじゃないか、同居人」

「……“勇者”って呼んで」

「じゃあ――勇者兼、居候(ニート&ヒモ)」

「やめてぇぇ!」


 笑いがこぼれ、居間にあたたかい空気が流れた。

 勇者は照れ隠しのように鼻をこすり、そっと湯釜の火加減を落とす。


(……肩書きがどうあれ、ここで誰かの役に立てるなら――それでいいのかも)


 魔王が立ち上がり、短く告げる。

「本日の役割、合格だ」

「マジで!? やった!」

「ただし、プリンに手を出したらすべて取り消しだ」

「そこだけは絶対厳しいーー!」

勇者、肩書きをますます盛られる。

ついに「居候(ニート&ヒモ)」が定着し、城下では「魔王のヒモ」説まで浮上。

……勇者の威厳? そんなものは最初から無かった。

だが――魔王城で過ごす日々は、勇者として育てられた彼にとって“初めての普通”でもある。

次回――「勇者よ……たまには役に立てよ」。

居候勇者の一歩が、はたして前進となるか、それとも転倒か。


どちらでしょうね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ