第32話勇者よ……買い物であそこまで酷くなったのはじめてです。
掃除・料理・洗濯に続く家賃労働。
今回は「買い物係」を任された勇者。
だが彼の買い物袋には“余計な物”ばかりが詰まっていた。
魔王城の門をくぐる勇者。
両手には山ほどの買い物袋。
「ただいまー! ちゃんと買ってきたぞ!」
「……」魔王は腕を組み、袋をのぞき込んだ。
「勇者。これは何だ?」
「へへっ! 見ろよ! 新作ゲームソフト!」
「いらん」
「あと限定ポテチ三袋!」
「……食材リストにあったか?」
「なかったけど旨そうだったから!」
魔王は袋の底をあさり、ため息をつく。
「……肝心の味噌と米がない」
「え? あ……忘れた!」
「忘れた、ではない!」魔王の怒声が城内に響く。
聖剣がため息混じりに呟く。
「勇者、そなたは金を管理させてはいけない類の人間だ」
「駄目な人間扱いすんなぁぁ!」
「事実だろ。あとこれは勇者、お前の金では無い。まずは謝罪だろう!」
「……ごめ」
その時、玄関のスピーカーがピッと光った。
――流れ出す運動会BGM。
買い物袋を振るたび、ポテチの袋がリズムに合わせてシャカシャカ鳴る。
「ちょ、勝手に合奏すんな! ポテチまで楽器にすんなぁぁ!」
「むしろ楽しげでよいではないか」魔王は冷静だ。
「俺は全然楽しくねぇぇ!」
「黙れ。一先ずは金を勝手に使い込んだ反省からだろ」
「……すいませんでした」
結局、夕食はポテチ三袋と水で済ませる羽目になった。
勇者は涙目で呟いた。
「……俺、ほんとに居候どころか足手まといじゃん」
「今さら気づいたか」
勇者、買い物に失敗。
生活必需品を忘れて余計な物ばかり買って帰還。
次回――「勇者よ……夜更かしして騒ぐなよ」。
居候生活は深夜騒音トラブルに突入する。




