第30話:勇者よ……料理で失敗するなよ
掃除に続き、次なる家賃労働は料理。
勇者の包丁さばきと味付け――結果は想像通りだった。
まぁ…あの勇者やし
魔王城の厨房。
勇者はエプロンを着けて腕を組んだ。
「よし! 今日は俺が夕飯を作ってやる!」
「不安しかない」魔王は椅子に腰掛け、本を閉じた。
「包丁は扱えるのか?」
「斬るのは得意だ! モンスター斬ってきたし!」
「料理は解体ではない」
勇者は勢いよく人参をまな板に置き、剣道のような掛け声を上げる。
「はぁっ!」
――ザクッ。
見事に人参は真っ二つ。まな板も割れた。
「……な?」勇者がどや顔。
「な、ではない。まな板を破壊するな」
聖剣が壁から冷たい声を投げる。
「勇者よ、そなたは切るよりも壊す方が得意なのでは?」
「うるせぇ!」
次は鍋。勇者は塩をつかみ――どさっ。
「え?」魔王の目が細くなる。
「勇者。今どれほど入れた?」
「えーっと……一袋?」
「それは“味付け”ではなく“埋葬”だ」
鍋はしゅわしゅわと音を立て、蒸気を上げる。
勇者が慌てて蓋を閉じたその時、厨房のスピーカーがピッと光った。
――流れ出す運動会BGM。
しかも今回は、テンポが徐々に加速していく。
「な、なんだよこれ!? 曲の速さにつられて鍋の泡も早くなってるんだけど!」
「……これは料理用モードかもしれんな」魔王が淡々と呟く。
「そんなモードいらねぇぇぇ!!」
勇者は半泣きで鍋を抱えた。
蓋がガタガタ揺れ、まるで爆弾のようだ。
「やばいやばいやばい! どうすればいい魔王!」
「……逃げるか」
「無責任すぎるぅぅ!!」
結局、料理は盛大な爆発とともに廃棄。
勇者は煤だらけで床に突っ伏した。
「なぁ魔王……俺、飯作る才能ゼロかも……」
「今さら気づいたのか」
勇者、料理で大惨事。
掃除に続き、労働スキルはまるで成長せず。
次回――「勇者よ……洗濯で色を分けろよ」。
居候不慣れな勇者の生活(試練)は、まだまだ続く。




