第3話:勇者よ……インターホンを押せよ
今回のテーマは「訪問マナー」。
毎度突撃してくる勇者に、ついに魔王が“インターホンの存在”を突きつけます。
常識と非常識がぶつかり合うファンタジー(という名の苦情)第3話、どうぞ。
魔王城の門前、重厚な扉がドカン!と蹴破られた。
「魔王ォォォ!! 今日こそ貴様を――って、え?」
勇者が踏み込んだのは、玄関先のポーチ。
その奥に、洗濯物を干していた魔王がいた。
フリルのついたタオルと、ウサギ柄のルームウェアが風になびく。
……空気が止まった。
「…………え、洗濯中?」
『てめぇ、またやったな。』
魔王が、ハンガーを静かにかけ直しながら睨みつけてきた。
『なぁ勇者……なんで毎回“ドア蹴破って”くるの?』
「いや、魔王城ってそういうテンションで入るもんじゃね?」
『どこ情報だよ!? 我輩ん家、宅配便でもインターホン押してくるぞ!?』
「てか、インターホンあるの? 魔王城に?」
ピンポーン♪
勇者の後ろで、妙に可愛い電子音が鳴った。
見ると、崩れた扉の脇に、ちんまりと最新式のインターホンがついている。
『あるよ!?てかそれ、防犯カメラ付きでモニターにも映るの!!』
「なんか意識高くない? セキュリティ……」
『そりゃ一国のトップだもん。最近は来客も多いし』
「来客いるの!?」
『町内会の回覧板とか普通に来るが!?』
勇者はしばらく黙り込んだあと、小さく呟いた。
「……ごめん、ドア壊しといてなんだけど……ピンポン押したら出てきてくれた?」
『出るわ!!パジャマのままでな!!』
魔王の怒声が玄関先に響く。
洗濯物の横で、勇者は土下座した。
読んでくれてありがとう!
そろそろ魔王のストレスが限界に近づいてきました。
次回あたり、魔王がガチで苦情窓口に電話しそうな勢いですが、勇者はまだまだ止まりません。
次回:「勇者よ……アポ取れよ」もお楽しみに!