第26話:勇者よ……脱獄して帰るなよ
処刑台に立たされた勇者。
しかし聖剣も封じられ、状況は絶体絶命。
呼ぶべき相手は――結局、○○だった。
広場を覆う黒い霧の中、処刑台は混乱に包まれていた。
兵士たちは恐怖に硬直し、群衆は悲鳴を上げて逃げ惑う。
『おい聖剣! いつも口煩い聖剣!!』
『口煩いだと!!』
『そんな事今はどうでも良いだろ! この状況どうすれば良い?! 教えてくれ!』
『……知らん。てか無理だ』
『……ん? は?』
『よく考えて見ろ。私は今現在、厳重警戒により封印状態だ。唯一の契約者であるそなたが無事だから辛うじて念話出来るだけだ。更にそなたも、封印具を使用され力を封じられておるではないか。何も出来ない』
『……嘘だろ』
『……もういっそ魔王でも呼んでみたらどうでしょうか?』
なるほどと納得した勇者は、鎖につながれたまま叫んだ。
「助けてくれー魔王ぉぉ! 早くなんとかしてくれ! 助けてくれ!」
『……我輩に命令するな。……チッ』
魔王が指先をひと振りすると、勇者を縛っていた鎖がカランと砕け散った。
勇者は両手を自由にして飛び上がる。
「うおお! 自由だぁぁ!」
「静かにせんか」
兵士たちが勇者を取り囲む。
「逃がすな! やはり魔王と通じている!」
「裏切り者を処刑せよ!」
「悪い! また今度説明するからぁぁ!」
「説明で済むと思うな!!」兵士と群衆が一斉に返す。
勇者は背を向けて全力で走った。
「結局、俺いつも魔王頼りじゃねーかぁぁ!」
「自覚するのが遅い」魔王が冷静に返す。
広場を飛び出し、路地を駆け抜ける勇者。
魔王はゆったりと歩きながらついてくる。
「……勇者、走り方が情けないぞ」
「処刑されそうになって走り方に気ぃ使えるかぁぁ!」
聖剣が勇者の背中でため息をついた。
「こうなれば、戻る場所は一つだな」
「うん……やっぱり俺、魔王城に帰るわ」
「討伐どころか帰宅宣言か」
勇者と魔王はそのまま城へと戻っていく。
背後の街にはまだ怒号が響いていたが、勇者は耳を塞いだ。
「ただいまぁぁぁ!」
魔王城の扉を開け放ち、勇者は叫んだ。
すると台所のスピーカーがピッと光り――またもや運動会BGM。
勇者は頭を抱える。
「結局ここが一番落ち着くけど! 俺もう完全に居候ポジじゃん……! BGMだけはマジで直してぇぇ!」
処刑台からの脱獄劇。 勇者が帰り着くのは、やっぱり魔王城。 次回――「勇者よ……ただいまと言うなよ」。 居候宣言は、もう誤魔化しきれない。




