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『勇者よ、常識を見ろ』シリーズ  作者: 深森あい


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第25話:勇者よ……処刑台に立つなよ


 石造りの広場に処刑台が設けられ、群衆が押し寄せていた。

 中央に鎖で縛られた勇者が立たされる。

 兵士が大声で告げる。

「勇者は魔王と通じし裏切り者! 本日ここに処刑する!」


 群衆がどよめき、罵声が飛ぶ。

「裏切り者!」「勇者の名を汚すな!」


「ち、違うんだ! 俺はただ……魔王城で生活してただけで!」

 勇者は必死に叫ぶが、笑い声と怒号にかき消される。


 聖剣が横で呻いた。

「勇者、これはまずい。本気で首を落とされるぞ!」

「いやだ! 俺はまだプリンも食べてないのに!」

「そこか!」


 処刑人が斧を振り上げた、その時。

 空がにわかに曇り、重々しい魔力の気配が広場を覆った。


 群衆がざわめく。

「な、なんだ!?」「魔王の気配だ!」


 黒い霧の中から現れたのは、漆黒のローブをまとった魔王。

 堂々と処刑台に歩み寄り、兵士たちを睨みつけた。


「我が居候に手を出すとは、いい度胸だな」


「い、居候!?」

 群衆がざわめく。


 勇者は涙目で叫んだ。

「魔王ぉぉ! 助けに来てくれたのかぁぁ!!」

「助けに来たのではない。生活費を払わぬまま死なれては困る」

「動機が家賃ぇぇぇ!!」


 兵士たちは武器を構えるが、魔王の威圧に動けず硬直する。

 その瞬間――処刑台の柱から、またもや運動会BGMが鳴り響いた。

 軽快な音楽に包まれ、広場は混乱の渦に。


「やっぱり魔王の呪いだ!」「勇者は操られている!」


「違うぅぅ! これはスピーカーが壊れてるだけなんだぁぁ!」

勇者の叫びは虚しく響いた。

ついに勇者は「裏切り者」として処刑台に。

国中が見守る中、彼の弁明はもはや届かない――。

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