第2話:勇者よ……靴を脱げよ
魔王城に土足で突入した勇者。
だがその床は――ワックス直後!?
魔王、激怒。勇者、無自覚。
戦い以前にマナーを学べ。第2話、開戦。
魔王城の扉が、今日も重々しく開かれた。
ギィ……と軋む音と共に、赤いマントをたなびかせた金髪の青年が、堂々と踏み込む。
「来たぞ魔王ォォォォ! 今日こそ貴様を討つ!!」
――バフッ。
勇者が踏み込んだその瞬間、足元から奇妙な音が鳴った。
「ん?」
見下ろすと、足元の真っ白な絨毯が、勇者のドロドロの革靴で見事に茶色く染まっていた。
その瞬間――
天井のスピーカーから、魔王の怒声が轟く。
『てめぇえええええええええええええ!!!』
「お、おお……!? ついに正面から声を……!」
『違うわ!!違うんだわ!!!勇者ァ!!!』
バチバチと魔力が空間を走り、空中に魔王のホログラムが浮かび上がった。
しかしその姿は――エプロン姿。
両手にはモップとスプレー。
「……お前、その格好なに?」
『掃除中だよ!!朝から3時間かけてワックスがけしたんだぞ!?何でお前は泥付きの靴で突っ込んでくるんだよ!!!』
「え、だって魔王城って……土足OKなダンジョンじゃね?」
『我輩の“家”なんだが!?!?』
絨毯を見た魔王は膝から崩れ落ちる。
『……もう無理……今日はもう帰って……勇者、君、戦いに来る前に最低限のマナーをだな……』
「魔王……」
『……なんだ』
「土足禁止なら……せめて玄関にスリッパくらい置いとけよな?」
沈黙。
長い長い沈黙のあと――
『お前、今度は“スリッパ履いたまま戦闘”すんのか……?』
「うん。可愛いの頼む。ウサギのやつ。」
『帰れ。』
読んでくれて感謝! 今日は泥靴、次回は……玄関破壊!?