第19話:勇者よ……夜に洗濯物を干すなよ
昼夜逆転ゲーマー体質の勇者。
ついに深夜、洗濯物を干して魔王の逆鱗に触れる。
生活リズムの乱れは魔王城全体に波紋を広げる――。
夜中の二時。
勇者はベランダでローブやシャツをバサバサと干していた。
「よし、これで明日には乾く! 夜干し最強!」
隣で聖剣が声をあげる。
「勇者、今は夜だぞ!? なぜ昼間にやらん!」
「昼間は眠いんだよ! ゲームやってたし!」
「堂々とゲーマー宣言するな!」
そこへ背後から低い声。
「……勇者」
「ひっ!?」
振り返ると、寝間着の魔王が腕を組んで立っていた。
「夜に洗濯物を干すのは禁止だ」
「なんで!? 誰にも迷惑かけてないだろ!」
「かけている」
魔王はベランダの外を指差す。
勇者が目を凝らすと、夜空の下を老竜がふわりと飛んでいた。
その巨体が一瞬バランスを崩す。
「……え、なんであの竜、ヨロけた?」
「光だ。夜に布を揺らすと月光を反射し、竜の目を惑わせる」
「そんな理由!?」
「さらに湿気る。夜干しは臭いが残る」
「生活感すげぇな!」
勇者は干しかけのローブを慌てて回収した。
そのとき――
干してあったシャツに、どこからともなく“運動会のBGM”がこだました。
風に揺れる布がスピーカー代わりに鳴っている。
「ちょっ!? 服から流れてんだけど!?」
「……もう壊れているどころではないな」
「BGMが服に感染してんじゃねーか!!」
勇者と聖剣と魔王は、夜風に揺れるシャツを前にしばし沈黙。
「……勇者、次からは昼間に干せ」
「わかった! ていうかBGMの方をどうにかしろよぉぉ!」
夜干しは迷惑・不衛生・そしてBGM感染の危険あり。
生活ルールは昼夜逆転勇者にとって最大の敵だった。
次回は――「勇者よ……来客にちゃんと挨拶しろよ」。
だ、誰か、、、!常識人は居ませんか?!
ゆ、勇者に常識を教えてあげてください!!




